Oct21Sat

筋肉と成長ホルモンはどう関係する?「筋肥大」都市伝説ウソホント。

2017.10.05

筋トレと筋肥大にまつわるさまざまな理屈とまことしやかな噂の数々。実は意外な勘違い(!?)が紛れていた。


[都市伝説1]
高強度の筋トレを行うと、成長ホルモンが分泌され、それが筋肥大を引き起こす。
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成長ホルモンとは191個のアミノ酸でできたペプチド。強度の高い筋トレ後には、傷んだ筋肉の修復のために分泌が起こり、たくましいカラダづくりを助けるもの、のはずだが、「成長ホルモンと筋肥大はストレートにはつながっていません」と明かすのは、長らく筋肉の研究を続けている山田茂教授(実践女子大学)だ。

「筋肥大を起こさせるトレーニングとは、強度の高いものだと言われます。また、成長ホルモンやテストステロンがいかにも肥大の主因のように言われますが、研究が大幅に進み、これらのホルモンは筋肥大に必須でないことが明らかになっていますし、運動強度が高くなるにつれて、テストステロンの分泌量は低下します」
成長ホルモンを分泌できなくした下の実験でも、運動によって筋肥大は明らかに起きた。

もちろん、成長ホルモンの分泌はカラダに変化をもたらす。だが、「筋トレ後の筋肉に作用するのは成長ホルモンよりもIGF(インスリン様成長因子)やMGF(メカノ成長因子)、FGF(線維芽細胞増殖因子)だろうというのが定説です」
筋肥大伝説がまずひとつ崩れた!

都市伝説1
成長ホルモンが出ないときも筋肥大は起こることがある。
C、Hとも成長ホルモンを分泌できないよう処置したマウス。Cは運動なし。Hには運動させたところ、成長ホルモンがないにもかかわらず、運動後には筋肥大を生じた。成長ホルモンが筋肥大に役立つとしても、分泌が必須の条件ではないことが分かる。なお、ヒラメ筋には遅筋が多く、足底筋には速筋が多い。どちらにも当てはまった。
出典:『骨格筋肥大と成長因子』山田 茂/運動性化学15-38Vol 1989


[都市伝説2]
筋肉は収縮する動きによって大きく破壊される。
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アームカールでウェイトを上げる動作はコンセントリック(短縮性伸縮)。一方、ゆっくり下ろす動作はエキセントリック(伸張性伸縮)。一般的にはより重い負荷を扱えるエキセントリックの方が、より強い刺激を筋肉に与えられると考えられているが、いずれにしても筋線維の100%を動員できているわけではない。

「筋肉は長い細胞の両端を腱で束ねたものではなく、非常に小さく、細かい細胞が無数に集まったものです。そのうちの何%かが縮もうとすれば、隣り合った細胞は必然的に引き伸ばされます」と山田教授。

都市伝説2
縮もうとする筋細胞は、隣り合った細胞を引き伸ばそうとする。これはウェイトを上げるときも、下げるときも同じだ。

「縮もうとして頑張る筋細胞が運動後に肥大するのではなく、つられて引き伸ばされた筋細胞により多くの刺激と損傷を生じるから、肥大するのはこちらの筋細胞です。細胞レベルで見ると運動強度が高くなるほど、筋細胞同士の引っ張り合いで多くの損傷を招くことになります」
ウェイトを上げる、下げるという動作の向きのことではない。「筋細胞は引き伸ばされるから壊され、筋肥大も起きるんです」
答えは結果的に○だが、エクササイズの動きの話とは違うので要注意。



[都市伝説3]
運動後すぐにプロテイン摂取しないと筋肉の肥大が起こりにくい。
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きょうは筋トレをやる日だから、体重×1.2gぐらいはタンパク質が必要だね。よし、運動後は30分以内にプロテインを飲むとするか。
「運動終了後30分以内では多分もう遅いんです。運動が刺激になって動き出すタンパク質の合成系は反応がとにかく速い」

つまり、トレーニング開始前に筋肉の中がアミノ酸でぱんぱんに満たされているイメージが理想的。筋トレの時間が迫ったから、より多く入れておこうではない。
「摂取タイミングを細かく考えるのはあまり意味がありません。日頃から体内に素材が十分に用意されていれば筋肉はちゃんと回復します。そもそも運動の真っ最中に破壊と再生が同時に起こっているんですから」

都市伝説3
筋肥大のゴールデンタイムを逃すまいと、一刻を争って糖とタンパク源を流し込むトレーニーは数え切れないが……。

そのうえタンパク質の摂りすぎには、デメリットもある。
「排出の際に肝臓や腎臓に重い負担となりますし、タンパク質の過剰摂取は体臭を強くする可能性があります。体重1kg当たり2g以上になると多すぎでしょう」
運動後や1回の食事だけで摂ろうとせず、日々不足しないよう心がけるべきなのだ。


『Tarzan』727号では、さらに4つの「都市伝説」を解明しています!


Tarzan No.727 上げろ!「代謝力」 掲載 〉
取材・文/廣松正浩 イラストレーション/藤田 翔 取材協力/山田 茂(実践女子大学生活科学部食生活科学科スポーツ栄養学研究室教授、理学博士)