Sep26Tue

さりげなく筋力を誇示できる「握力」について考えてみよう。

2017.05.16

リンゴを潰せば居酒屋でヒーロー。でもそれ意味あるのか。いやいや握力には深い世界があるんだよ。


握力と筋力の相関は?

赤ちゃんはハイハイはもちろん、寝返りだって満足に打てないうちから、手のひらに指を置いて圧を加えると軽く握り、引き抜こうとすると強く握り返す。これは把握反射と呼ばれる反応。「母親にしがみついて落ちないために必要な反応だと考えられています。把握反射は生後4〜6か月で消えますが、それだけ握力はヒトにとって重要な能力なのです」(コンディショニングスペシャリストの桑原弘樹さん)。

体力測定で筋力を測定するときは、通常、握力が用いられる。これは安価な握力計で簡単に測れるから。一時期測定されていた背筋力と比べて、測るときに怪我をする恐れもなく、上手い下手といったテクニックの関与を最小限に留めながら安全に全力が出せるというメリットもある。

後述のように握力は体力の手軽な指標にはなるが、必ずしも全身の筋力と相関するわけではない。30代から足腰を中心に筋力は徐々に衰えていくが、下のグラフからわかるように握力は男女ともに20〜30代でピークに達すると50代までほぼ横這い。女性は70代になっても20代とさほど変わらない握力を保っている。これは握力がモノを持ったり、握ったりする日常的な動作と関わりが深く、それだけ衰えにくいからだろう。

性別、年齢別の握力の変化
性別、年齢別の握力の変化
握力は11歳くらいまで男女差がほぼないが、そこから男性が女性を大きく上回る。日常的に使っている筋力だけに、年を取っても急速に衰えることはない。「平成26年度体力・運動能力調査」(文部科学省)より

握力があるといいことある?

握力の平均は男性なら45kg前後、女性なら30kg前後。これくらいの筋力が備わっていれば、パソコン入りの重たいカバンを持ったり、吊り革に摑まって電車の急ブレーキに堪えたりする能力は十二分にある。ちなみにリンゴを片手で潰すには70kg程度の握力がいるのだとか。

リンゴを潰す必要はないけれど、日常生活で握力が活躍するシーンは案外多い。雑巾をキツく絞ったり、ペットボトルのキャップや瓶の蓋を開けたりするときも、前腕を回しながら握力を発揮している。ドライバーを回す、釘を打つ、ノコギリを引くときなど、DIYでも握力がないと困る場面が少なくない。

リンゴを潰す
リンゴを潰せれば称賛される。まあ、そこまでいかなくても、握力の鍵を握る前腕を魅力的に見せてみよう。

握力の発揮で主役となるのは前腕内側の前腕屈筋群、前腕外側の前腕伸筋群、手の内部に筋肉の両端(起始と停止)を持つ内在筋。なかでも前腕は露出しやすいから、握力トレで前腕が肥大すると、さりげない筋肉アピールができるのも利点。

握力が健康維持に役立つ可能性もある。世界17か国、14万人を対象とした研究では、握力が5kg落ちるごとに死亡リスクが16%増加すると判明。これは握力が体力を大まかに反映している証拠だ。握力だけ鍛えるのはもったいないから、握力とともに全身の筋育で健康力をつけよう。


握力を極める。

握力を鍛える手軽なギアといえば、おなじみのハンドグリッパー。並の握力があれば握れるものが一般的だが、なかには握力を極めないと握れないタイプもある。その代表格が、アメリカのアイアンマインド社から発売されている《キャプテンズ・オブ・クラッシュ(COC)》グリッパー。

ダンベルのようにCOCグリッパーには強度が11段階あり、日本人なら下から3番目の「トレーナー」と呼ばれるレベル(握力約45kg)がクリアできたら十分。ダンベルトレと同じように、少しずつ重たいものに挑戦すれば、いずれリンゴが潰せるようなパワーが身につくに違いない。

「ナンバー4」と名付けられたCOCグリッパーの最上級負荷は、平均値の4倍近い166kgの握力がないと握れない代物である。ちなみにこのナンバー4のグリップを閉じた人は世界に5人しかいないといわれている。

《キャプテンズ・オブ・クラッシュ(COC)》グリッパー
まだ5人しか閉じていないグリッパー。
これが噂のナンバー4。並行輸入品がネット通販なら3,000円以下で手に入る。見た目は地味だが全力を出してもビクともしない強さ。

最強グリッパーに挑みたくなるくらいの握力がついたら、マスターしたいのは両腕を天に突き上げる“オリバポーズ”(画像検索してください)。全盛期のシュワルツェネッガーをコンテストで破ったことで知られる伝説のビルダーであるセルジオ・オリバが得意としたポーズで、握力の鍵を握る前腕を美しく強調する。


『Tarzan』718号を読んで握力トレに挑戦!


Tarzan No.718 「筋育」のススメ 掲載 〉
取材・文/井上健二 イラストレーション/山口正児 取材協力/桑原弘樹(コンディショニングスペシャリスト、桑原塾主宰)