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開幕直前! パンパシ水泳で活躍が期待される、鈴木聡美選手の平泳ぎの鍵とは?

2018.08.07

楽そうに見えてテクニックが必要な泳法だから、初心に帰って再入門。鈴木聡美選手がお手本だ。

ロンドン五輪の輝かしい活躍で知られる平泳ぎの鈴木聡美選手。東京五輪を見据え、今でも練習で試行錯誤を繰り返す。一見、ラクラク泳げそうな平泳ぎ。実は技術とパワーが必要な難度の高い泳法だということ、知ってましたか?

2歳年上の姉がスイミングスクールで泳ぐ姿を見て、「こんな大きなプールで泳ぐなんて、めちゃくちゃ気持ちよさそう!」と思い、親にねだって水泳を始めたのが4歳の時。やがて、

「水の中が気持ちよくて楽しいというのと同時に、何かで勝ちたい、得意なものが欲しいという気持ちが心の中に生まれました。私は泳ぎが得意。かけっこで負けても泳ぎでは負けないぞ、みたいな」

鈴木聡美1

小学校を通じて、その負けず嫌いに拍車がかかる。どのスイミングスクールにも、進級するごとにキャップにつけるワッペンの色やデザインが変わっていくといったシステムがある。

「当時通っていたスクールはピンクのワッペンの次が銀とか金で、選手コースに入れるレベルでした。私はどうしてもピンクワッペンを抜け出せなくて、進級していく姉や友達のことが羨ましくもあり憎くもあり。“なんでだ〜!”とすごく怒ってました(笑)」

得意というレベルではなく、もっと上手に泳げるようになりたい、技術的に上達したい、と痛切に思うようになったのがこの頃から。競泳の世界に夢中になり、4泳法の中でも技術的に最も難しいといわれる平泳ぎを選んだ。

「正確に言うと自分で選んだのではなく、コーチから“こいつは平泳ぎしか泳げないんだ”と思われたから。クロールやバタフライを泳ぐとき、呼吸するために必ず平泳ぎのキックが1回入ってたんですね。自分では得意だから平泳ぎを泳いでたつもりなのに、高校生の時、実はそういう理由だったと聞いて、ウソでしょ!?と(笑)」

鈴木聡美2

不得意な部分を矯正するのではなく、得意な部分をひたすら伸ばしていくコーチだったことが幸いした。以後、キックとグライド(腕を前に伸ばして進む姿勢)を中心にした泳ぎを習得していった。

ずっと探求し続けているのは水の抵抗を受けないフォーム。

大学入学後に頭角を現し、ロンドン五輪では3つのメダルを獲得するという日本競泳女子としては史上初の快挙を成し遂げる。その後も日本代表に選ばれ続けたが2015年に代表落ち。スランプに陥るが、自分に何が足りないかを見つめ直し、自主的にトレーニングに取り組んだ結果、代表に復帰、リオ五輪への出場を果たした。

「でも、決勝には進めなかったんです。そのとき、“こんなの私じゃない!”と思いまして。会場に監督も見に来てくれていたのですぐにスタンドに行って、“まだ私行けますよね!? 続けさせてください!”と談判したんです」

鈴木聡美3

負けず嫌いがここでも発揮され、東京オリンピックを目指すことに。今の目標は8月開催のパンパシ水泳2018で結果を出すこと。

「平泳ぎの世界のレベルは年々上がっていますけど、国内のレベルも上がっています。パンパシで決勝に進めるのは、1国につき2名まで。最低限決勝の枠に入って、そのうえで自己記録とメダルを目指したいと思います」

まずは熾烈な国内争いを制することが、喫緊の課題。平泳ぎの完成度を高めるために、この日も練習に励む。

「平泳ぎの難しいところはボディポジションを高く保つというところ。潜りすぎずに水面に近いところにいないとキックが水に当たりにくいし、抵抗の少ない泳ぎにならないんです」

鈴木聡美4

ただでさえ、平泳ぎはクロールに比べてボディポジションが下がりがちになる泳ぎ。腕で水を掻いた後、呼吸をするためにカラダを持ち上げるとき、どうしても腰が沈んでしまうのだ。

「そうならないために体幹トレーニングをしたり、腹圧をしっかり入れてカラダを浮かせたり。どううまく脚をカラダに引きつけるか、体幹をどう保つべきか、呼吸の後も下に潜るんじゃなく前にもっていくためにはどうすればいいか。いろいろ考えながら泳いでます。いまだに難しいですね」

難度の高い平泳ぎだが、基本に忠実に。さあスタートを!


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鈴木聡美
●すずき・さとみ 1991年、福岡県生まれ。ミキハウス所属。山梨学院大学時代、100m平泳ぎで日本記録樹立、2010年の日本選手権で50m、100m、200mの3冠達成。ロンドン五輪では100m銅、200m銀、400mメドレーリレーで銅メダルを獲得。

Tarzan746号を読んで、平泳ぎをマスターしよう!


Tarzan No. 746 もう一度、泳いでみよう。 掲載 〉
取材・文/石飛カノ 撮影/藤尾真琴