Aug15Wed

那須川天心に聞く、ピークを見据えた体重コントロール術。

2018.07.17

「体力の回復には米と餅。水は常に5リットル飲んでます」

対戦相手と対峙する以前に、計量という難関に挑む必要がある格闘家の世界。そんな中でプロに転向した16歳でRISE王者に輝き、19歳の現在まで無敗を貫くのがキックボクサー、那須川天心だ。

6月17日の試合では、自身が持つRISEバンタム級(55kg以下)王座を返上してフェザー級(57.15kg以下)に階級を上げ、現ルンピニースタジアム認定スーパーフェザー級ランキング1位のロッタン・ジットムアンノンとRISE世界フェザー級王座を懸けて対戦。ムエタイ最強といわれるロッタンに苦戦するも、延長戦の末、勝利を収めた。その左腕に巻かれたギプスが、いかに厳しい試合だったかを物語っている。

那須川対ロッタン
「パンチもキックも圧が凄かった。初めて恐怖を感じました」と那須川選手が振り返る6月のロッタンとの死闘の様子。腕のケガが癒えたら再び闘いの場に戻ってくるはず。

階級をひとつ上げるということは、従来と体重コントロールのやり方も変わってくるということだ。

「いつも試合前は5kg前後減らすので、階級が上がってもその範囲で調整するだけ。だから体重調整については苦労しませんでした。現状ではバンタム級で戦える相手がいないので、違うステージで強い相手と戦いたかった。予想通り、フェザー級で勝ってきただけあってロッタンはすべてにおいて強かったです」

那須川天心2

減量で苦労しないために工夫していることとは。

那須川選手が凄いのはその試合頻度。通例では2〜3か月ごとだが、実に月1回ペースで試合を組んでいる。つまり、絶えずピークを見据えて日々を過ごしているのだ。

「試合後少し休んだら、もう次の試合の準備に入ります。1週間前までは練習でガーッと追い込んで、最後は疲れを抜く意味も込めて心肺トレーニングをメインに行い、技を確認する。いつもそのパターンです」

食事については、計量1週間前から減量メニューになる。それまでは普通に食べて、意外にもご飯やお餅を摂るのだとか。

「体重を減らすには食べる量を抑えることに尽きるんです。では限られた食事量の中で何を食べるか考えると、少量でエネルギーがあって、腹持ちする米や餅が一番だと思う。それまで2〜3週間練習で追い込んでいるので、回復力を高める意味でも効率的なんです」

白米、餅
〈減量期〉少量でも効率的にエネルギー補給。
減量期の初期は1食につき200gの白米や餅を食べる。体重の減り具合に応じて食べる量も微妙に調整していくのだとか。

それでも、食事で減らせる体重は2kg程度。残りの3kgは……?
そう、水を断つのだ。

「いきなり水を抜くと体調を崩して試合どころじゃなくなるので、その前から準備しておく必要がある。自分の場合は普段、水を1日5リットル必ず飲んでいます。そうして常に代謝を高めておけば、計量直前の何日間か水断ちしてもカラダの機能はいつも通り。ウェイトコントロールであまり苦労しないのは、常に水分を蓄えた、体重を減らしやすいカラダだからかもしれません」

選手によっては1か月くらいかけて減量するケースもあるが、那須川選手が「直前の1週間」にこだわる理由はほかにもある。

お粥、経口補水液
〈計量後〉計量を終えてもドカ食いは厳禁。
いきなりガッツリ食べるわけじゃない。お粥や経口補水液など、胃腸にやさしいもので徐々に体重を元に戻していくのだ。

「1か月も食事を節制するとストレスが溜まりますよね。あと、前日の計量をパスした後は試合までに少しでも体重を戻したい。そこで長期間緩やかに体重を落としていると、体重の戻りもゆっくりになる。短期間で減量した方がリバウンドも早く、より優位に立てるんです」

緻密に考え抜かれた体重コントロール術。プロ転向後26勝無敗20KO。圧倒的強さの一端が、ここにも表れているのは間違いない。

那須川天心3
●なすかわ・てんしん 1998年生まれ。小学6年生でキックボクシングを始め、16歳でプロ転向。いきなりRISEバンタム級王者に輝く。現RISE世界フェザー級王者。「キックボクシング史上最高の天才」と呼ばれる。

Tarzan745号では、ボディコンテストを目指す人たちの体重コントロール術を紹介!


Tarzan No. 745 この夏こそ、脱げるカラダになる! 掲載 〉
取材・文/黒田 創 撮影/藤尾真琴