Jul17Tue

なぜ、その競技を!? 四足走行最速の男インタビュー。

2018.07.05

新たな競技を生み、挑む。壮大な野望を見据えて。

世界で初めて“四足走行”を競技化し、ギネスブックにその名を刻んだ、いとうけんいちさん。未踏の地を開拓し、道を作り、歩み続けてきた。100m走10秒切りを目指す彼は、その動機からして凄い。

「昔からサルが好きで動物園でよく眺めていたのですが、15年前にニューヨークの動物園で初めてパタスモンキーを見て、走りの速さに衝撃を受けたんです。聞けば時速50km超えで霊長類最速だという。で、見よう見まねでやったら思った以上にうまく走れた。自分には四足走行の才能があるって気づいたんです」

四足走行

かつて人類で四足走行に本気で取り組んだ人はいない。ならば自分が先駆者に! 挑戦が始まった。

「競技の知名度を上げるにはギネスブックに載ることだなと。でもいきなり申請しても今まで誰もやっていないわけですから門前払いされるのがオチ。なのでまずは実績を作らないと、と考えて公園のトラックでひとり練習を始めたんです」

パタスモンキーの四足走行は馬のように四肢を浮かすギャロップ型という走法。いとうさんはこれをマスターするべく足繁く動物園に通い、サル以外の動物の走り方やカラダの使い方も研究した。練習時間は毎日6時間にも達し、手のひらに犬の肉球のような大きな豆ができるまでに。そして5年後の2008年、100m走18秒58の記録でギネスブックに申請。見事認められた。

手
いとうさんの手にはゴツゴツとした肉球(?)が。

「ふざけているように見えますが、僕としては大まじめ。人間の祖先も四足歩行だったわけで、それが進化の過程で二足歩行になった。でも、走ることに関しては二足になったのは退化だと思っているんです。二足歩行は下半身を中心とした関節や筋肉を使いますが、四足歩行になれば四肢や肩の関節、さらには体幹や肩まわりの筋肉など、推進力を出すために使える関節や筋肉が増える。サルを含め多くの動物が速く走れるのはそこに理由があって、言い換えれば人間には速さを追求できる余地がまだまだたくさんあるんですよ」

歩数計
四足走行の練習時には首に犬用の歩数計を着用。どこまでも徹底しているのだ。

いとうさんはいまなお毎日3時間のフィールド練習と2時間の筋トレを行い、家では1時間四足スタイルで生活する。その先に見据えるのは100m走10秒切りだ。

「推進力を生み出すために今練習しているのは、4本の脚がすべて地面から離れるシングルサスペンションギャロップ走行。そのために背筋も強化しています。さらにカラダの連動性をもっと高めれば、ウサイン・ボルトの記録だって抜けるはず。究極の目標は100m7秒台です!

いとうけんいち
いとうけんいち
●1982年、東京都生まれ。四足走行100m走15秒71はギネス記録。また50m走は7秒89。2012年頃から活動が海外でも注目されるように。撮影でお願いしたスタート姿勢でも緩みは一切なし。眼光の鋭さに思わず気圧される。

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取材・文/黒田 創 撮影/角戸菜摘