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ランニングの、やってはいけない!

2018.02.23

補強トレやシューズの使い分け……タイムを良くするために懸命にやっていること、実は逆効果のものも!?
日頃の練習法からレース前の行動まで、ランナーのNGをいますぐチェック!


【 初級者編 】

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フォームが大事だから普段から姿勢に気をつける。

正しく立てない人が正しく歩けるわけがないし、正しく歩けない人が正しく走れるわけがない! そんな高説を聞くこともある。確かにごもっともだが、立ち姿勢を完璧に正すところから始めると、いつまで経っても走り出せない。 

ランニングコーチの岩本能史さんは「僕だって猫背でO脚ですが、そのまま気にせず走っても平気です。フェンシング選手は日頃から横向きに歩くわけではない(笑)。ランも日常の延長線上ではなく、フェンシングと同じように競技特有の動きと捉えた方が気楽です」。

猫背などの不良姿勢を一瞬にしてランニング仕様に変えるコツは、走り出す前に左右の肩甲骨を寄せること。

「肩甲骨を寄せると背骨のカーブが整って骨盤が前傾します。骨盤が前傾するとカラダの真下で着地し、その反動と反射で快走できるようになります」。走っている最中にフォームが乱れたら、肩甲骨をあと3cm狭める気持ちで寄せると、骨盤が前傾してフォームが正しくリセットできる。


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ホームコースを決めてゆっくり長く走る。

ランナーは週何回、月何kmくらい走るかといった走行距離を気にしがち。しかしランナーとして成長したいなら、目を向けたいのは走る回数や月間走行距離ではなく、練習の中身である。

長距離選手は、ポイント練習とつなぎ練習という性質の異なるトレーニングを組み合わせるのが定石。ポイント練習は走力を上げるためのビルドアップ走やインターバルトレといった強度の高いもの。つなぎ練習はジョグのように走力の低下を抑えるための低強度の練習だ。

高強度の練習ばかりだと疲労が溜まるし、低強度の練習だけでは走力は横這いで上がらないから、ポイント練習×2回+つなぎ練習×2〜3回といった具合にミックスするのだ。仮に1週間に5回、計25km走るとする。ならばジョグ5km×5回より、ジョグより速いペースの3km走と距離を延ばした10km走のポイント練習の2回、つなぎ練習のジョグ4kmを3回の方が効果的だ。


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汚れたシューズは洗って干してつねに清潔に保つ。

清潔好きだとランニングシューズも洗いたくなるが、丸洗いするのはオススメできない。洋服を洗うと伸び縮みするようにサイズ感が変わることがあるし、変質してパフォーマンスが落ちることも考えられる。汚れが気になるなら表面を布などで拭き、インナーには除菌力のある消臭剤を振りかけておこう。

雨に濡れても、ウェアのように天日干しにするのは避ける。紫外線でクッション材などの劣化を招く恐れがあるからだ。濡れたシューズは形崩れを防ぐために新聞紙を詰め、日の当たらない風通しの良いところで陰干ししよう。

どう丁寧にケアしてもシューズは300〜500km走ったら寿命。たとえ見た目に異変がなくても、目に見えないクッション性や反発性などは間違いなく落ちる。洗って清潔に保って長持ちさせようとすると機能が落ちた分だけ足腰への負担が増えたり、トレーニング効果が下がったりする。古い靴は街履きに格下げし、新品を買おう。


【 中・上級者編 】

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夏場の走り込みが大事だから暑い日も頑張って走る。

年数回レースに出るのが恒例な中・上級者ランナーのお正月は9月。涼しくなり、そこから本格的にマラソンシーズンが始まるからだ。となると、酷暑が続く7〜8月に走り込んでおかないとコンディションが整ってこない。

実業団や大学駅伝の選手たちは涼しい高地や北海道で合宿を張るが、市民ランナーはそんな真似はできない。かといって真夏の真っ昼間に「今日はポイント練習の日だから」と無理して走るのは絶対にやめるべき。気温50度で行われる世界一過酷ともいわれるバッドウォーター・ウルトラマラソンを5回完走している岩本さんは、自らの体験を踏まえてこう諭す。

「暑い日に走ると多かれ少なかれ脱水を引き起こし、そのダメージから回復するのに下手をすると1週間くらいかかります。それでは走力は上がるどころか逆に落ちる恐れすらあるのです」。

夏場に練習するなら、日が昇っていない時間帯の早朝ランか夜間ランに限る。それができないなら冷房が効いたジムのトレッドミルでビルドアップ走やペース走をやろう。いずれにしても脱水を防ぐためにスポドリでこまめな水分補給を。


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練習の中身に応じてランニングシューズを使い分ける。

料理の達人が食材に応じて包丁を替えるように、中・上級者になるとトレーニング内容によってシューズを使い分ける強者も出てくる。長い時間走り続けるLSDでは少し厚底でクッション性の高いモデルを履き、インターバルトレのようなスピード練習では薄底で反発性に優れたものを選び、レースは軽量かつ素足感覚のもので走るといったパターンが多いのだ。

ところがマラソンなどの長距離のトップ選手では、レースから日々のトレーニングまで1足(1モデル)で通す人が大半だとか。ランニングシューズは百花繚乱で何を選んだらいいか戸惑うもの。そこから自分の足と走りにベストフィットした一足を見つけ出したら、いろいろ浮気せずにそれでレースから普段の練習までまかなった方が負担は少なくパフォーマンスも高まりやすい。

「そもそもLSDは長時間走るから厚底がいいとされますが、LSDはペースが遅いから長く走っても着地衝撃の蓄積は少ない。逆にスピード練習は短時間でもペースが速いので負担は大きくなる。自分に合う靴なら1足で十分対応できるのです」。


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フルマラソンが遅くなるからウルトラマラソンには出ない。

フルマラソンは走り始めて5年ほどすると自己ベスト更新が難しくなり、ランナーとしての成長に陰りが見え始める。すると河岸を変えたくなり、トレイルレースやウルトラマラソンに挑戦する人が増える。ちなみにウルトラとは通常フルを超えるレースを指す。

一方、ウルトラを走るとフルのタイムが落ちるという都市伝説がある。真偽は如何に?

「僕はそうは思いません。ウルトラでフルが遅くなるとしたら、長距離を走る練習ばかりを続けて心肺機能が落ちたり、フォームがすり足気味の効率が悪いペタペタ走りに改悪されたりするため。マラソンと同じようにビルドアップ走のようなスピード練習を行ったり、僕が提案してポピュラーになった峠走(峠を一気に上がり、一気に下る練習法)を取り入れたりすれば、フルのタイムは落ちません」。

ウルトラではフル以上の距離を踏み、フルでは味わえないような心身の変化に直面する。その経験はフルでも生きるから、ウルトラを走ると逆にフルが速くなる可能性もある。


〈ADVISER〉
岩本能史さん
ランニングコーチ
●いわもと・のぶみ ランニングチーム〈club MY☆STAR〉代表。世界一過酷なバッドウォーター・ウルトラマラソン(217km)5回完走など、豊富な経験に裏付けられた、常識を覆す斬新な指導術が評判を呼ぶ。


実はやってはいけない、あんなことやそんなこと。続きは 『Tarzan』736号をチェック!


Tarzan No. 736 やっては、いけない! 掲載 〉
取材・文/井上健二 イラストレーション/おほしんたろう 取材協力/岩本能史(ランニングコーチ、〈club MY☆STAR〉代表)