Nov17Sat

川内優輝選手、特別寄稿。ランナーに贈る言葉。

2018.02.15

働くランナーの星、川内優輝選手のほぼ原文ママの言葉を味わってほしい。

川内優輝さん
YUTAKA/アフロスポーツ

―新年早々、この男のぶっ飛びぶりに驚かされた読者も多いだろう。本年元日、川内優輝選手は『マーシュフィールド・ニュイヤーズデイ・マラソン』(米国・ボストン)に出場。零下17度という極寒の中、全身タイツに目出し帽といういでたちで完走し(2時間18分59秒)、全世界をあっと言わせた。2時間20分切りは自身76度目であり、当然ながら世界最多記録だ。なぜこれほどの頻度でレースに出続けられるのか? どうやって回復しているのだろうか……。

市民マラソンに参加すると私よりもたくさんのレースに出場しているという方にたびたびお会いします。

2017年11月5日にニース・カンヌでフルを走り(2時間15分02秒)、翌週さいたま国際でフルを走り(2時間15分53秒)、その翌週に上尾でハーフを走り(1時間3分35秒)、さらに2週間後に福岡国際(2時間10分53秒)でフルを走りました。

その翌週に小川でハーフを走り(1時間4分05秒)、翌週に防府でフルを走り(2時間10分03秒)、さらに2週間後にはマーシュフィールドでフルを走りました(2時間18分59秒)。ですので、約2か月でフル5本、ハーフ2本を走ったことになります。

私の場合には「日本中・世界中の市民マラソンを巡る」という夢をかなえるため、レースを練習の中心としたサイクルが確立していますので、そうした夢に興味がないランナーや、自分に合ったサイクルを確立していないランナーと同じようには語れないと思います。

実際に17年の例で言えば、レースに出ない週末は何をしていたかというと、上尾と福岡国際の間の週は20km(1時間1分25秒)、防府とマーシュフィールドの間の週は5km×10本(16分30秒ペース、リカバリーレスト5分)を走っていましたので、レース並みの負荷の練習を続けていました。

毎週のようにレースに出場しますが、実業団や学生がやっているような練習を公開(レース)でやっているのか、非公開(練習)でやっているのかの違いだけで、他の日本のトップ選手と比べ、特に変わったことはやっていません。

何も考えずに適当にレースに出場しているわけではなく、狙ったレースから逆算し、他のレースをスケジュールに落とし込むことで練習メニューを作成しています。また、平日は仕事のため練習量が落ちますので、必然的に週末はハーフマラソン以上のレースを選択することが多くなります。

脚、心が重くてもレース後ゆっくり5分間は走ります。

回復方法としては、やるべき回復ルーティーンをキッチリとこなしているだけに過ぎません。具体的にはレース後のダウンジョギングと温泉での交代浴、そして、鍼治療が中心です。

レース後のダウンジョギングをやるとやらないのとでは、回復状況が変わってきます。フルを走った後は脚の重いことが多いのと解放感から「さあ飲みに行くぞ」というランナーも多いと思いますし、実業団でも適当に数分歩くだけの選手も見かけます。実際に私もフルの後には同じような脚の状態になりますので気持ちはよくわかります。

でも、回復状況の変わってくることが分かっているので、重い脚と疲れた気持ちを奮い立たせ、歩くようなペースから始め、ゆっくり身体をほぐしながら最低でも5分以上は走ります。多い時には30分くらい走ります。

そうして走っていると段々と脚がほぐれ、動きもペースもよくなります。レース後の脚の筋肉の突っ張った感じが軽くなるまで走れたときほど回復は早いような気がしています。

温泉での交代浴は1時間くらいやります。温泉が好きなので疲労回復のためだけでなく、日本国内の遠征ではその土地その土地の温泉へ行きます。レース後にそうした温泉に浸かるのも走り続けることの楽しみの一つです。

鍼治療には通常1か月に1〜2回しか行きませんが、大事なレースの前や身体が危ないとSOSを出してきたときには週に1回くらい行きます。また、ケガをしたときにはこじらせて故障につなげないよう、練習時間を削って毎日のように治療に行きます。

原始的な回復方法ばかりで驚いた方もいるかもしれませんが、他には食べ放題などでたくさん食べる以外に回復のための特殊なことは何もしていません。回復のためのルーティーンが確立しているので、そのルーティーンをただ回しているだけに過ぎません。

私は高校時代、故障を繰り返したため湿布などを使い過ぎ、身体が拒否反応を起こすようになってしまったため、湿布もスプレー剤も塗り薬も使えません。冷却ジェルシートにさえかぶれる身体になってしまいました。だから、疲労回復のための薬品に頼れず、ダウンジョグ、温泉、鍼といった方法を愚直に続けることでしか身体を回復させられないのです。それだけに人一倍、故障に対しては神経質になっています。

―食事では何を注意していますか?

他のランナーよりも食べる量が多いと思います。テレビなどの影響により、私は常に大盛ラーメンやカレーばかり食べているようなイメージを持っていると思います。

確かにそうした料理も食べることはあるのですが、それだけでなく野菜をしっかり摂るようにしています。野菜をたくさん食べるときにはサラダバーに行くことも多いです。また普通の食べ放題にも練習やレースで走り込んだ後にはよく行きますが、その場合にも意識して野菜をたくさん食べるようにしています。

―翌日はどこまで回復できますか?

レース内容とレース後にクーリングダウンのジョギングや交代浴などのケアを十分にできたかによって違います。また、タイムに関係なく、ゴールまで失速することなく走り切れた場合には比較的ダメージは少ないです。しかし、レース途中で先頭集団から脱落したりして単独走が続いた場合には、大きなダメージの残ることが多いです。

フルマラソンを完走した後は、どんなにクーリングダウンや交代浴を十分に行っても脚がほてり、なかなか寝つけない夜が多いです。だから、少しでも寝つきやすくするため、当日はコーヒーなどを飲まないようにしています。

フルマラソンの翌朝は脚が重く身体がだるいことも多いですが、早朝に頑張って起き、ゆっくりジョギングをしていると脚がほぐれてくることが分かります。また、レース後にやるべきケアをしっかりやると、2日後以降に効果が大きく表れてくるように思います。

(寄稿文全文は、Tarzan735号で読めます)


川内優輝さん
●かわうち・ゆうき 1987年生まれ。埼玉県庁所属。学習院大学時代は関東学連選抜選手として箱根駅伝競走に2度出場。2011年東京マラソン3位(2時間8分37秒)。世界陸上マラソン日本代表として3度出場。「知らない世界を知りたい」という思いを抱え、世界各地で走り続ける。


ランナーへの熱いエールも!続きは『Tarzan』735号で!


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取材・文/廣松正浩