Oct22Mon

〈nakamura〉の革靴|毎日使う「道具」としてのオーダーメイド革靴。

2018.09.23

衣服の中で、靴ほど身体に近く、また機能性を求められるものはない。足に合わない革靴を少しの時間でも履いていると、大きな苦痛を感じるもの。そうした問題に対する最終的な答えはやはり「オーダーメイド」となるわけだが、価格や知識などの面で少しハードルが高いのも事実。

オーダー靴のブランド〈nakamura〉代表の中村隆司さんも「いくら良い靴でも、あまりに高いものだと、なかなか毎日気軽に、というわけにいかないですよね」と笑う。彼らが作るオーダー靴は1足3万円前後が中心。そこに中村さんのこだわりがある。

工房

「僕が作りたいのは、玄関先で足がついその靴を選んでしまうような、デイリーで履き心地の良い靴。であれば、スニーカーと革靴の中間くらいの、柔らかく軽い靴がいいだろうと。デザインをシンプルにし、少人数の工房で製作することで価格帯も抑えています」

もともと「道具としての靴」に関心を持ち、登山靴の老舗〈GORO〉で修業した中村さん。奥さんとともにブランドを立ち上げ、以来、この工房でオーダー靴を作り続けている。その数、年間1200足。常に3〜4か月待ちの状態が続いているほどの人気だ。

型

「毎日、多くのお客さんと会って足を見ていますが、足が幅広でも踵が細い人もいれば、甲だけが高い人もいる。左右の形が違う方も、長さが違う方もいらっしゃいます。そうした微妙な身体の癖に応じて微調整しながら靴を作ります。足幅が広くインソールから足がはみ出して不安定になっているなと思えば、素材や底の形状を変えたり」

「なかでも意外と大事なのが履き心地に対する“好み”の部分です。ゆったり履きたい方もいれば、少しキツめが好きという方もいる。そうした嗜好性を無視して、僕らが勝手に“これが貴方のジャストフィットです”と決めることはできません。注文時に、お客さんとの会話の中からそうした部分を探り出していくことも重要ですね」

外形のサイズだけでなく、それぞれの身体が持つ「感覚値」のようなものを意識すること。自分にとっての「ベスト」を知ることで、毎日使う「道具」をより使いこなせるようになるのだ。

ヤク革のオーダーメイドシューズ
ヤク革のオーダーメイドシューズ
柔らかいヤク革を使ったシューズ(27,000円)。〈nakamura〉の靴のソールの多くは軽さの出るセメント付け。「一般にセメントの靴は安物というイメージがあって、オーダー向きじゃない、修理もできないと思われがちですが、ウチは木型がありますから、すべて解体して修理できるんです」。ひと月に30〜40足ほどが修理のために工房に戻ってくる。東京都足立区江北4-5-4、(TEL)03・3898・1581。

中村隆司さん

●なかむら・たかし 1966年生まれ。登山靴の老舗での修業、職業訓練学校での1年間の技術習得を経て1998年に独立。東京・足立区のショップでオーダーを受注している。


Tarzan No. 749 二度と太らない!掲載 〉
取材・文/井出幸亮 撮影/阿部 健