Nov23Thu

G1シーズン到来! サラブレッドはアスリートだ! 競走馬の身体能力の秘密に迫る。

2016.10.30

10月から競馬の秋G1シーズンが開幕。
えり抜きのサラブレッドが集うG1は、いわばアスリートホースの夢舞台。
G1をより楽しむため、競走馬に詳しい作家、辻谷秋人さんにフィジカル&メンタルの真実を聞いた!


KEYWORD1【エネルギー供給】

運動のエネルギー供給には糖質のみの無酸素系、脂質メインの有酸素系がある。競走馬はヒトより有酸素系の依存度は高いが、それが様変わりするのは秒速14mを超えるあたりから。以降、無酸素系の利用率がじわじわ上がる。
「レースに不可欠な心肺機能の強化には、有酸素系から無酸素系への切り替わりが生じる強度でのトレーニングが不可欠。競走馬の調教では伝統的に1ハロン(200m)を15秒で走ることが重視されてきましたが、それはちょうど秒速約13mに相当します」(作家の辻谷秋人さん)。マラソンランナーと同じく、無酸素性作業閾値での練習が競走馬を強くするのだ。

速度と供給エネルギー

速度と供給エネルギー
無酸素系と有酸素系はつねに同時に使われているが、運動強度(スピード)が上がるほど無酸素系への依存は高まり、有酸素系の利用率は下がる傾向。
出典/JRA競走馬総合研究所


KEYWORD2【速筋と遅筋】

サラブレッドの筋肉も瞬発力に優れた速筋、スタミナに優れた遅筋の2タイプからなる。ヒトではその割合はほぼ半々であり、生まれつき速筋が多いとスプリンター、遅筋が多いとマラソンランナーに向く。「しかしサラブレッドの筋肉の約87%は速筋、残る13%が遅筋。サラブレッドは生まれながらの短距離ランナーなのです」。
なぜ速筋ばかりか。その理由は馬が本質的に草食動物だから。戦って勝てない肉食動物に捕食されないために、馬にはいち早くトップスピードに乗って逃げ切る戦略がベストなのである。

速筋、遅筋が占める割合

速筋、遅筋が占める割合
ヒトでは速筋と遅筋は通常半々。短距離走が得意なら速筋が多く、長距離走が得意なら遅筋が多いと推定される。サラブレッドは圧倒的に速筋優位。


KEYWORD3【馬のメンタル】

スポーツは心技体。馬の「技」は調教と騎乗、「体」は血統と調教が作る。ならば「心」、メンタルはどうか。「レースで先行する馬群に突っ込む勇気がある馬、あるいは限界を突き破って頑張る馬には強いメンタルがあります」。
一方、エンジンのかかり方が遅く、反応が鈍い競走馬を「ズブい」と呼ぶ。
「サラブレッドは負けても飼い葉(飼料)が減らされるわけでもなく、しごかれるわけでもない。そんな体験を重ねて“もう頑張らなくてもいいや”とモチベーションが落ちると、ズブくなって実力が発揮できなくなるのです」


馬はなぜ走るのか やさしいサラブレッド学

競走馬をアスリートとして捉える。
サラブレッドは走るのが好きか? 月刊誌『優駿』で長年“馬学”の連載をしてきた辻谷さんがサラブレッドと競馬を科学的に分析した一冊。『馬はなぜ走るのか やさしいサラブレッド学』三賢社刊、1,200円。


Tarzan No. 706 腕太く! 胸厚く! 腹細く! 自宅でできる筋トレ 掲載 〉
取材・文/井上健二