Dec18Mon

『ドリーム』宇宙の英雄たちを陰で支えた、隠れた才能たちの物語。

2017.10.06

チータ:今回の映画は『ドリーム』です。

ジェーン:感動の実話系ですね。60年代のNASAの宇宙計画の裏側に参加した黒人女性たちの物語。人種差別、性差別がまだ強かった当時のアメリカで、職業婦人として頑張る女性たちのガールズパワー映画です。

チータ:数学の天才だけどNASAでは下っ端の仕事しか与えられていないキャサリン。黒人女性のキャリアアップのために黎明期のコンピューター技能を仲間たちにいち早く学ばせるドロシー。裁判所に訴えて白人専用の技術者養成学校に黒人への門戸を開かせるメアリー。3人の女性の奮闘記ですね。

ターザン:仕事に夢を持って挑む人たちの話だから『ドリーム』なんだろうけど、この邦題はいかがなものかね。これじゃ何も伝わらない。

チータ:あ、そこツッコんじゃいますか。配給元は触れてほしくない部分だろうと思いますけど。

ジェーン:ネットが荒れたんですよね。

チータ:最初は「ドリーム 私たちのアポロ計画」という邦題で宣伝されてたんですけど、サブタイトルの「私たちのアポロ計画」というのが内容にそぐわないということで批判が……。

ターザン:実際はアポロ計画の前のマーキュリー計画時代の話だからね。

チータ:そこでSNS上で批判がバーッと広まって炎上状態になりまして。それでサブタイトルを取っちゃったという経緯があるんです。

ドリーム
©2016Twentieth Century Fox

ターザン:でも、配給側の気持ちも分かるんだよな。「マーキュリー計画」じゃ宇宙計画の話だということが一般の人にはピンと来ないから、よりポピュラーな「アポロ計画」を選んだんだろ?

ジェーン:だったら「私たちの宇宙計画」にすればよかったのに。

チータ:「宇宙」って言葉が女子ウケが悪いと思ったんじゃないですかね。

ジェーン:まあ、これは働く女子や、これから社会に出る女子に見てもらいたいような映画だもんね。

チータ:「アポロ」はポルノグラフィティの曲にも歌われてるからキャッチーでロマンチックだと。

ジェーン:だけどアポロの話じゃないから。

ターザン:いや、彼女たちはその後も長くNASAに従事したことは映画の中でも触れられてるから、当然アポロ計画にも参加したんだろうし、ケネディ大統領の「10年以内に人類を月に送る」という有名な演説も引用されてる。月着陸はマーキュリーじゃなくてアポロ計画で実現するわけだ。だから「私たちのアポロ計画」と言えなくもない。

ジェーン:それは拡大解釈すぎるでしょ。

ターザン:うん、映画のタイトルなんてのは文学的なものなんだから、「それは解釈間違ってるよ」とか「センス悪い」という批判はあって当然だけど、「不当表示だ」みたいにルールの話にするのはおかしいと言いたいんだよ。

ジェーン:もう……寝た子を起こすような議論はやめましょうよ。

ターザン:少なくとも「原題と違うタイトルはつけるな」みたいな極論には反対したいね。確かにひどい邦題も多いけど、成功例もある。『アナと雪の女王』が原題の『フローズン』だったら、あんなにヒットしただろうか?

チータ:この映画の原題は「ヒドゥン・フィギュアーズ」。直訳すれば「隠れたカタチ」ですかね。

ジェーン:彼女たちが「縁の下の力持ち」だってことね。

ターザン:マーキュリー計画は『ライトスタッフ』にも描かれた宇宙飛行士たちばかりが英雄視されたけど、裏で地味な仕事をする大勢のスタッフの努力の積み重ねで成功したという、『下町ロケット』的な話なんだよな。

チータ:キャサリンが天才的な幾何学の才能があったことと、黒人ということで埋もれそうになっていた人たちが本人の不屈のチャレンジ精神で花開いたというサクセスストーリーであることを意味しているわけですね。

ジェーン:なんだか話がそれちゃいましたけど、作品自体は夢を持って働く人々を応援する、ストレートにいい映画ですから男女問わずオススメします。

cinema_icon_tarzan_web ターザン
今では当たり前の雇用機会均等の考え方も、過去の人々の努力で得られたもの。

cinema_icon_jane_web ジェーン
理解があって頼れる上司を演じてるケビン・コスナーがやっぱりイイ男です。

cinema_icon_cheeta_web チータ
『ムーンライト』にも出てたジャネール・モネイは歌の方でスゴい人なんですよ。


『ドリーム』
東西冷戦時代、米ソは制空権につながる宇宙開発にしのぎを削っていた。ヴァージニア州ハンプトンのNASAラングレー研究所では、優秀な頭脳を持つ黒人女性たちが集められ、計算手として働いていた。キャサリン、ドロシー、メアリーの3人は、逆境にもめげず自らの能力を発揮する道を切り開いていく……。
監督/セオドア・メルフィ。出演/タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ、ケビン・コスナー、マハーシャラ・アリほか。9月29日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開。
http://www.foxmovies-jp.com/dreammovie/

Tarzan No.727 上げろ! 「代謝力」 掲載 〉
取材・文/黒住 光