Nov23Thu

『ブレードランナー 2049』過去と未来に感傷するのが人間なのだという定義。

2017.11.02

チータ:さて、今年最大の話題作『ブレードランナー 2049』、ついに見ちゃいましたね。

ターザン:いや、80年代派には超話題だけど、若い世代はどう思ってるんだよ? 完成披露試写会は大盛況だったけど、平均年齢50歳って感じだったぞ。

ジェーン:うーん、やっぱりSF映画オタク向けって感じ? なんか難しそうっていうイメージが強いですよ。

チータ:知らない人のために説明しておきますと、82年に公開されて世界中にカルト的なファンを生んだSF映画の名作『ブレードランナー』の、30年後を描く続編であります。

ターザン:あくまでカルト映画だったよね。『スター・ウォーズ』と『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』で大ブレイクした直後のハリソン・フォードが主演で、『エイリアン』を大ヒットさせた直後のリドリー・スコットが監督で……という布陣にもかかわらず、最初の劇場公開時はコケたんだよ。俺が封切りで見た新宿ミラノ座はガラガラだったぞ。

チータ:その新宿ミラノ座も、もう存在しませんけど。

ブレードランナー 2049

ターザン:寂しいねえ……。ま、昔話はいいとして、後のSF作品には多大な影響を与えまくったんだよな。特にサイバーパンクというジャンルの先駆けになった。『ブレードランナー』がなければ『攻殻機動隊』も『ニューロマンサー』も『マトリックス』も生まれなかったと言って過言じゃない。

ジェーン:サイバーパンクって?

ターザン:90年代頃にIT時代を予見したSFのジャンルだよ。

チータ:『ブレードランナー』自体はサイバーパンクじゃないんですけどね。サイバーパンクの「サイバー」にはネットワークに接続することによる人間精神の拡張や変容というテーマだけじゃなくて、人間の肉体を機械化する志向も含まれています。で、それらを90年代ストリートカルチャー的なアナーキズム感覚で描く部分が「パンク」なんですね。

ターザン:お前はウィキペディアか!

チータ:『ブレードランナー』はIT的な要素はなかったですけど、レプリカントと呼ばれる人造人間をテーマにしたところが「サイバー」だったんですね。強烈だったのは「パンク」の部分で、未来のロサンゼルスを新宿歌舞伎町と香港をミックスしたような風景に描いて、西洋と東洋、未来と過去をゴチャ混ぜにした感覚が当時は斬新で、レトロフューチャーと呼ばれたんです。

ターザン:要はミクスチャー感覚のハシリだったわけだ。

ジェーン:はあ……何となくオシャレな映画だったんだというのは分かります。旧作のおさらいはこれぐらいにして今回の『2049』を語ってください。

ターザン:結論から言えば……面白かった。以上。

ジェーン:それじゃ何も伝わらないでしょ。

ターザン:試写の時に監督の「ネタバレ厳禁!」っていうメッセージが伝えられてるから、何も言えないよ。

ジェーン:ハリソン・フォードが演じるデッカードとレイチェルという女レプリカントの関係とか、前作を見てないと分からないだろうなと思いましたけど。

ターザン:いや、そういう人が前にいたんだなってぐらいの理解で分かるでしょ。ていうか、話にこだわるよりも描写を味わうのが『ブレードランナー』なんだよ。「世界観」なんて思考停止な言葉は使いたくないんだけど、独特の背景美術やガジェットの手触りを感じさせるような描き方は正しくブレランの精神だなと思う。

チータ:前作ファンへのサービス的なところよりも、新しい要素の方が面白いですね。サイバーパンクを超えてVR時代に突入した今の時代の感覚をちゃんと取り入れてるところがよかった。

ターザン:いや、新しさというよりも、あらかじめ我々が失ってしまった未来を描くという、その哀しさへの視線がブレラン的なんだ。本当は大コケしちゃった方がブレランらしいんだけど、これは見といた方がいいですよ。

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ターザン
続編としてのストーリーには賛否あるでしょうけど、美的作品として一流です。

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ジェーン
映画史上見たことがないラブシーンとか、ありきたりじゃない映像に感動です。

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チータ
本物と偽物の違いは? という原作者ディックのテーマへのヴィルヌーヴ的回答。


『ブレードランナー 2049』
近未来のロサンゼルス市警には、人類に反乱を起こした人造人間レプリカントの抹殺を任務とするブレードランナーと呼ばれる捜査官がいた。捜査官Kは、あるレプリカントが秘匿していた遺骨から人類を脅かす危険な事実を発見し、30年前に女レプリカントとともに姿を消した捜査官デッカードの行方を追う。その裏には、レプリカントの製造を受け継いだ大企業ウォレス社の陰謀が……。
監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ。出演/ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォードほか。10月27日より丸の内ピカデリーほか全国公開。
http://www.bladerunner2049.jp

Tarzan No.729 ボリュメトリクス 掲載 〉
取材・文/黒住 光