Sep19Wed

流 大(ラグビー選手)インタビュー「タックルにパス。すべてのスキルを高めることが重要」

2018.06.08

グラウンドを縦横無尽に駆け抜けるスクラムハーフ。日本中を沸かしたワールドカップから3年、彼は再び奇跡を起こすために、今、戦っているのだ。

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流 大は日本を代表するスクラムハーフである。大と書いて“ゆたか”と読む。現在、彼が戦っている大きな舞台は3つある。ひとつが日本最高峰のトップリーグ。ここでは〈サントリーサンゴリアス〉に所属する。そして、世界の強豪チームを集めたプロリーグであるスーパーラグビー。このリーグのために日本の精鋭を結集して作られたチームの名は〈サンウルブズ〉。最後が日本代表チームだ。

この3つの舞台に関してはおいおい語っていくことにするが、まずはスクラムハーフというポジションを知っておこう。このポジションは、フォワードのスクラムから出てくるボールを、バックスに配球するのが、ひとつ大きな仕事。パスは多くの場合、バックスの司令塔、スタンドオフに送られるのだが、重要なのは正確性だ。たとえば、パスが乱れると、スタンドオフの動きが遅れ、その影響がバックス全体に及んでしまうこともある。

もうひとつ大切なのがスタミナ。ラグビーではしばしばフォワードが密集状態になり、そこでポイントが形成される。モールやラックと呼ばれるが、このときすぐ後ろについて、フォワードに指示を与えたり、出てきたボールを受け取ってスタンドオフにパスを送るのも仕事。つまり、常にボールを追いかけていかなくてはならず、15人の選手の中でもっとも長い距離を走ることを強いられるのである。

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スクラムハーフは身長が低い選手も多いポジションだが、近年、どんどんと選手が大型化するラグビーの中で、165cmの流が堂々と戦っている姿には驚かされる。彼自身はスクラムハーフというポジションをどのように捉えているのだろう。

「大切なのは、まずスタンドオフと一緒にゲームを作ることですね。バックスとフォワードの繋ぎ目なので、双方のコミュニケーションを取っていくことが必要になる。もちろん、状況に応じて、球出しを早くしたり、遅くしたりの判断もしなくてはなりません。さらには、僕はキックも使うので、(相手の)裏のスペースを見ておくことは、意識していますね。試合中ではじっくりと考えるなどという余裕はなく一瞬ですから、それができるように日々の練習で、カラダで覚えるようにしているんです」

さて、前述した舞台の話である。まず、サンウルブズは2016年度シーズンより、スーパーラグビーに参加した。1年目のシーズンは15戦行って1勝。2年目は2勝。今シーズンは、ぜひ3勝をというファンの期待に応えることができず、これまで1勝9敗に甘んじている(5月15日現在)。しかし、これはある意味仕方がないことなのだ。日本以外はラグビーの強豪国、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、アルゼンチンのチームで、まだまだ実力の差は、如何ともしがたい。昨年、2勝を挙げたときには、よくやったとまではいかないが、まずまずという目で見る人も多かった。

「勝てるようにならなくてはダメだとは思うのですが、サンウルブズができて世界のトップ選手と戦えるようになったのは、いいことですね。世界のレベルの高さを実感できますし、揉まれていくうちに強くなっていけると思いますから」

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一方、トップリーグでは、サントリーサンゴリアスは16-17年シーズン、17-18年シーズンと連覇を果たした。そして、今年1月に行われたトップリーグと日本選手権の2冠を懸けたパナソニックワイルドナイツとの戦いは、近年、稀に見る好ゲームだった。前半、早々にサントリーがトライ。ゴールキックも決まり7点リード。パナソニックも開始8分に5点を返す。前半はサントリーがもうワントライを決めて、12-5で折り返す。そして、後半にはパナソニックがペナルティゴールで12-8に得点差を縮め、最後の最後で、サントリー陣営に深く入り込む。

ここでトライが成功すれば逆転というスリリングな展開。ところが、パナソニックボールであったのに、痛恨のノックオン(ボールを前に落としてしまう反則)で、ノーサイド(ラグビーで試合終了の意)となってしまったのである。このとき、サントリーの選手の喜び方は半端ではなかった。その歓喜の渦の中に、もちろん流の姿もあった。

「日本で一番レベルの高い試合ができたと思っています。サントリーはアタックに一番重きを置いていて、そこはしっかりとやらなければいけないんですが、2連覇できたのはディフェンスが強化できたからというところもあります。パナソニックは間違いなく一番強いチームで、リーグ戦でも負けていましたから、リベンジという気持ちで臨みました」

「相手は足の速い選手が多いので、あまりフリーでボールを持たせないようにすることと、常に主導権を握っておくことが大事だった。結果的にはそんなに走られていなかったので、よかったと思います。16-17年シーズンの優勝もうれしかったのですが、今回はそれ以上でした。2連覇を目指す立場になって、まわりがサントリーをターゲットにやってくるので、その中で勝てたというのが大きかったんだと思っています」

日本のラグビーは今、過去から現在のうちで、もっとも強い選手たちが揃っている。それを目の前で見ることができるのだから、ぜひ一度グラウンドで観戦してもらいたい。この競技の迫力に圧倒され、魅力に引き込まれるに違いない。

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トップリーグを倒せた。それが大学一番の思い出。

小学校3年生のとき、地元・福岡県久留米市のチーム〈りんどうヤングラガーズ〉でラグビーを始めた。

「ボールを持って追いかけっこしているような感じで、それが面白かったんでしょうね。ここで、中学校3年生までプレーしていました」

流の素地は、このチームで作り上げられていった。そして、高校に入学する。彼が進学した時代は、九州でラグビーといえば、東福岡高校であった。というより、常に花園での優勝候補の一角になるほどの強豪で、流もここへ入ろうと思っていたようだ。しかし、最終的に選んだのは熊本県にある県立荒尾高校であった。

「熱心に誘っていただいたので、決心しました。中学での試合なんかにも足を運んでくれていたんでしょうね。自分の何がよかったのかはわからないですけど、まぁ、声を出してチームを引っ張っているところとかを見てくれていたんだと思います。本当に、技術的には全然、上手くなかったですからね。初心者が多かったので、なかなか勝てなかった。ただ、厳しいトレーニングをしながら、仲間と頑張れたことは大きな財産になっています」

高校からラグビーを始めた選手がほとんどで、本来なら、花園出場は叶わぬ夢。しかし、3年時にはキャプテンを務め、「初心者なりにできること、強みを出していこう」とハードな練習に励み、花園出場を果たしたのである。

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そして、大学も熱心に誘ってくれた帝京大学を選ぶ。ところが、この帝京大学は荒尾高校とはまったく違い、流が入学したときには、大学選手権を2連覇中の強豪であった。彼はこの大学のラグビースタイルを、こんな感じで見ていたようだ。

「その頃は、フォワード中心の、そんなに面白くないラグビーだなと思っていました。ただ、ディフェンスはしっかりしていますし、チームとしては強いのはわかっていた。選んだ理由は、チームのカルチャーとか組織のよさですね。高校生だったので具体的に何がと聞かれても困るのですが、直観的にここはいいチームだと感じることができたんです」

1年のときは、ほとんど試合に出場することはできなかった。が、2年時から頭角を現す。そして大学も、このとき3連覇、4連覇と勝利を積み重ねていった。高校まではそれほど強くないチームに所属していた彼が、初めて味わった感覚だったろう。

「でも、チャンピオンだという意識は、そんなにありませんでした。毎年、(選手の学生は)変わりますしね。だから毎日、一生懸命トレーニングして、最後に優勝しようという想いだけでやっていました。トレーニングはハードで走り込みもありましたし、フォーメーションの練習、それに基礎体力作りでウェイトトレーニングなどもやっていました」

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大学4年のときには、主将を任された。そして、大学選手権6連覇を達成し、日本選手権ではトップリーグのNECグリーンロケッツに勝利するという輝かしい足跡を残した。

「大学時代で一番うれしかったのは、トップリーグを倒したことです。自信もありましたし、倒せると思っていました。なかなか難しいことなんですけど、そのシーズンの始まる前からトップリーグに勝つという目標を立ててその準備をしてきた。それが、結果に繋がったと思います」

実は、流は中学生のときのりんどうヤングラガーズでも、この後に所属するサンゴリアスでも、そしてサンウルブズでも、はたまた日本代表でも、キャプテンを務めている。つまり、入ったチームすべてでチームのまとめ役になっているのだ。いったい、彼のどこがキャプテンに向いているのか。

「よく質問されるのですが、自分ではわからないって答えているんです。ただ、誰にでも思っていることははっきりと言うので、それが理由のひとつなんでしょうかね」

「ベスト8は果たせない目標では決してない」

さて、最後の舞台が日本代表である。来年はいよいよ日本でワールドカップが開催される。前回の大会では、日本チームは南アフリカに勝利し、世界中のラグビーファンを驚かせた。しかし、予選で3勝したのに、得失点差で決勝進出を逃すという結果に終わってしまった。次は自国開催となる。チームには、はっきりとした目標があるという。

「まずは、ベスト8を狙っていきたい。そのために、しっかりとチームを作り上げたいですね。勝つためにはスキルが重要だと思っています。ラグビーにおけるスキル、タックルもですし、パスもそうです。とにかくすべてをレベルアップして、それをプレッシャーの中でも、問題なく遂行できるようにならなければいけない。それができるようになれば、(ベスト8は)果たせない目標では、決してないと思っています」


●ながれ・ゆたか 1992年生まれ。165cm、75kg。福岡・久留米市の地元チームでラグビーを始める。熊本県立荒尾高校では3年時に主将を務め、花園出場を果たす。帝京大学進学後はラグビー部の6連覇を牽引する。2015年にサントリーサンゴリアスに加入。16年に主将に、17年に日本代表に初選出。18年シーズンよりサンウルブズに参加。


Tarzan No. 742 最強の“肉食” 掲載 〉
取材・文/鈴木一朗 撮影/藤尾真琴