Dec18Mon

丸 佳浩(プロ野球選手)インタビュー「3連覇を目指すために、秋、春と準備をしていきたい」

2017.12.01

広島の不動の3番打者になった彼は、セ・リーグ2連覇を走攻守で牽引した。そして今、来年も優勝するためにどう貢献していけるかを考えている。

丸 佳浩

2017年、セントラル・リーグのペナントレースを制したのが、広島東洋カープである。しかも2位に14.5ゲーム差というブッチギリであった。昨年にも優勝を果たしているので、連覇ということになる。その中心打者の一人として活躍し、優勝へと牽引したのが、丸佳浩だ。

広島ファンなら、誰でもご存じだと思うが、タナキクマルという言葉がある。これは広島の1番から3番までの打者の頭の文字を取った呼び名で、1番の田中広輔、2番の菊池涼介、そして3番の丸ということになる。こんな呼び名ができたのも、この打順が非常に安定していることの証拠でもあろう。今年の丸の成績は、打率はプロ生活8年の中で2番目の3割0分8厘であり、ホームランは最多の23本。そして、とくに記しておきたいのはチャンスでの勝負強さである。得点圏打率は3割1分8厘で、とくにランナーが一・二塁のときには、なんと4割1分7厘である。

ペナントの最中でも、チャンスに強い選手という印象を与えていたが、それがはっきりと数字になって残っているのだ。残念ながら、広島はクライマックスシリーズで、横浜DeNAベイスターズに敗れてしまったが、とにかく丸にペナントについて聞いてみた。

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「昨シーズン、優勝したことで、今シーズンは厳しい部分はありましたね。いかにして自分たちの目標である、ピッチャーを中心とした、守り勝つ野球をするかというところで。自分たちの野球をするというのは単純なことなんですが、それが難しいところでもある。どういう意識を持てば、ひとつに向かっていけるのか。結論は非常にシンプルですが、昨シーズン、僕らがいい意味で経験できたことのひとつである、目の前の試合をどんな状況であろうと、しっかりと戦っていくこと。それだけをチーム全体でやるようにした。その結果が優勝だったのだと思います」

「僕は野手なのでその目線でしか見られないのですが、去年はある程度は点が取れていました。ただ、去年取れていても、今年はどうなのかは、蓋を開けてみなければわからないことが多い。不安まではいかないけれど、今シーズンはどうなるのかなという思いはありました。だから、開幕戦で阪神に負けたあと、10連勝できたことが、まずはよかった。大きな波だったと考えています」

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開幕前、広島の評価は決して高くはなかった。昨シーズン、先発で10勝を挙げた黒田博樹が現役を引退。投手としてだけでなくチームの精神的な柱として、選手全員に目を配ってきた彼がいなくなったのは、大きな穴と関係者には映ったのであろう。しかも、この穴に対して広島は大型の補強は行わなかった。それに対し、巨人には山口俊をはじめとする3選手、阪神には糸井嘉男が移籍し、そのために混戦になると考えられていた。おまけに開幕直後にジョンソンが離脱し、順風満帆の船出というわけではなかった。

「正直、決してチームは万全ではなかったです。しかし、これも去年の経験が生きました。相手とのゲーム差や、相手が何連勝中などということは考えずに、その日の試合に全力で臨む。そして、結果が良くても悪くても切り替えて、フレッシュな気持ちで次へと進む。本当に単純な繰り返しを、143回やっていった感じでしたね。選手としては、フィジカルについてはシーズンを通して長いスパンで考えることはあるのですが、メンタル的なことはそうでもない。僕も打者として600回近く打席に立つので、当然、波がある。だから、僕の場合は練習から本番、毎回の打席に至るまで、常に一緒の入り方ができるようにしています」

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まずソフトボールが、自分の基礎を作ってくれた。

小学校3年生でソフトボールを始める。そして中学校で軟式野球。高校で硬式野球に入る。丸はソフトボールで、自分の基本のキが出来上がったと考えている。

「まず、ソフトボールはピッチャーから打者までの距離が短いので、球が速いんです。だから、速い球に対しては、目は慣れてくるんですね。また、守備でもバッターから近いので、すばやい対応が必要になる。あと、バッティングでは、スピードに負けないように、いかにコンパクトに打つかということが課題。だから、ここで、まず基礎ができたんです」

それだからか、中学で軟式野球をやり始めても、何の無理もなく見事に対応できた。というよりは、ソフトボールよりずっと簡単な感触を得たようなのだ。

「中学校に上がったときに、(軟式野球は)球が遅いなと思いましたね。実は、軟式のときが一番楽しかったかもしれない(笑)。ピッチャーとショートをやっていたのですが、軟式は球がよく曲がるので投げていて気持ちよかった。それに、僕はカラダが硬いんですが、ボールがよく弾むので腰高でも捕れるんです(笑)。そのときは、自分の中では“オレ上手いなぁ”って思っていましたね」

ところが、千葉経済大学附属高校に入学すると、その自信が一気に揺らいでしまう。硬式野球は空気が入った軟式ボールとは違い、コルク材やゴム材を芯にした硬式ボールを使うので、ボールがそれほど弾まないという特性があるのだ。

「入ってすぐに、上手いとは一切思わなくなりました。腰高ではゴロを捕れないんです。ショートのポジションも3日ぐらいでクビになりました。それで、ピッチャーに行ったんです。最初はよかったけど、1か月もしないうちにスピードがどんどん落ちていって―原因はわからないのですが―消去法で外野ってことになった。ただ、これもフライが全然捕れない。まぁ、ひどかった。自分には守備のセンスがなかったんです」

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だからだろう、彼は常に人一倍努力する。それは、高校のときも同じだった。外野の腕を磨き、ピッチャーとしても再生し、2年の夏の甲子園で3番ライトで初出場。3年の春のセンバツではエースとして2回戦まで進むことができた。ちなみにプロ入りしてからは、13年から16年にかけゴールデングラブ賞に輝いている。で、そのプロ入りはドラフト3位で広島へ。そして、春の二軍キャンプで、前田智徳と出会う。前田は現役時代、“孤高の天才”と呼ばれたバッターで、たとえヒットが出ても、自分のバッティングに納得できなければ、ムスッとしてしまうほど、完璧を求めた選手であった。丸は今も、尊敬する選手に前田を挙げる。

「入団する前は前田さんって寡黙なイメージがあったんですが、入ってみたら結構ラフにしゃべってくれて……。ひとつ大事なことも教えてもらいました。ちょっと失礼かもしれませんが、前田さんは自分のバッティングを追求していくタイプだと思っていたのです。が、“状況に応じて、どういうバッティングがチームの勝利に近づくかを考えろ。無駄死にしない。アウトになっても、何か事を起こさせるようなアウトにしろ”とチームバッティングの重要性を語ってくれた。これは今でも自分にとって大切な言葉ですし、実行できるように努力しています」

そしてもう一人、大切な指導者がいた。あのイチロー選手を育てた、新井宏昌コーチである。

「最初に指導を受けたときはダウンスイングだったんです。この打ち方だと、インコースはいいんですが、アウトコースだとボールとの接点が小さくなって打ちにくくなる。だから振り上げなさいと言われたのですが、自分はアッパースイングしているイメージで振っても、後で映像を見たら、ようやくレベルスイングっていうところ。自分のイメージと実際のスイングにはだいぶズレがあった。そういうところを新井コーチに会ったことで直せたことが、今に繫がっていると思ってます」

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とにかくバットを振り込む。オフシーズンに重要なこと。

さて現在、野球選手はオフシーズンに入っている。この期間の過ごし方が、来シーズンを左右するのは間違いない。

「シーズンが終わった直後は、どこが良くて、どこが悪かったのかをコーチと話し合います。そのうえで、悪かったところを直していくんですね。あとは、とにかくバットを振り込むことが大切になってくる。まず、僕の場合はオフになるとウェイトトレーニングが増えます。それに並行してしっかりと走りつつ、振り込む。そして、キャンプではさらに振り込んでいき、同時に実戦的な練習が入ってシーズンに入っていくという感じです」

選手にとって、トレーニング以外に重要なことといえば食事だろう。若い頃は何も考えずに食べていたというが、今はいろいろと考えるようになったようだ。

「若い頃は何でもよかったんですが、長く野球を続けるためには食事は大事。野菜がキライなんです。だから、独身のときはホウレンソウのおひたしなんて、魅力を感じなかった。それが今では、奥さんが我慢して出し続けてくれたおかげで、美味しいと思えるようになった。これは、感謝しなければいけないですね」

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もう、丸の気持ちは来シーズンに向かっているであろう。彼の目標はやはり、ペナントレース3連覇なのであろうか。

「今シーズンは不調なときに我慢ができた。悪いときに4打席ノーヒットで終わるのか、フォアボール1個で出るのかで大きく違う。出塁したことが、次の試合に繫がるんです。それと、だいたい欲が出ると不調になるんです。強く打ちたいとか、引っ張りたいとか。この欲を捨てられるか否かというのが、結果を左右する。そして、欲を捨てられるようになるには、技術をある程度つけなくてはならない。どういうアプローチで技術を習得していくかは、コーチとこれから決めていって来シーズンに繫げます。3連覇っていうと、セ・リーグでは巨人しか成し遂げていない。まずは、そこを目指して、その中で自分がどう貢献していけるかを考え―走攻守のすべてを―秋、春と準備をしていこうと考えています」


●まる・よしひろ 1989年生まれ。177cm、90kg。小学校ではソフトボール、中学校では軟式野球を経験。2007年、千葉経済大学附属高校から、ドラフト3位で広島東洋カープへ。プロでの成績は13年に盗塁王。14、15年ベストナイン。13〜16年ゴールデングラブ賞。17年にはセ・パ交流戦優秀選手賞、6月月間MVP、セ・リーグ最多安打を記録。


Tarzan No.731 上半身テッパン筋トレ50 掲載 〉
取材・文/鈴木一朗 撮影/藤尾真琴