Apr27Thu

eneloop [充電池]

2016.12.08

いつでも使える、何回でも使える。

生まれてはじめての電池はクリスマスの朝に機関車と一緒にやってきた。両手で抱えられない大きな箱の赤いリボンをほどくと、黒い機関車、映画『ポーラー・エクスプレス』のあれ、と思ってくれればいい、と客車ふたつ、信号機とそしてたくさんのレールが収められていた。

機関車の顔の上にライトがあってスイッチを入れると目の前を明るく照らしながら走る。だから、わざと部屋を暗くして走らせた。電池は単2を2本、子供の手のひらには大きく、重たかった。この機関車のおかげで電池には寿命があることを覚えたけど、まだタンニの他にタンイチ、タンサンがあることを知らない。

タンイチはもう少しあと、日曜日に台風と一緒にやってきた。まだ昼前だというのに、雨風が強くなってきて雨戸を閉められた。外に出てはいけないと言われた。停電してもこれがあるから大丈夫、と見せられたのが大きく長いクロームメッキの懐中電灯、大きな電池が、それも3つ入っていた。へえ、これがタンイチか。長くて重い懐中電灯、本番では一度も使ったことがなかったな。

生まれてはじめて買った電気製品は電池式シェーバーだ。ということは電池を買うようになったのは中学3年になってからか。この頃になると男子は、頭の中はともかくカラダは大人の入り口、ヒゲが生えてくる。最初は父親のウィルキンソンだったかフェザーだったか、を使っていたけど、しょっちゅう口のまわりを血だらけにしちゃうので、ついに回転式の電気シェーバーを買った。シューンッと回って、キレイにヒゲをカットしてくれた。電源はタンニがひとつ。もう、タンニより手のひらの方が大きくなっていた。

いまや、80か国に累計4億個も出荷される〈パナソニック〉の充電池《エネループ》は1996年にそもそもが始まっている。

《エネループ・スタンダードモデル単3形》。ニッケル水素電池、4本入り1,100円(編集部調べ)。http://panasonic.jp/battery/charge/
《エネループ・スタンダードモデル単3形》。ニッケル水素電池、4本入り1,100円(編集部調べ)。http://panasonic.jp/battery/charge/

当時の充電池業界は容量競争、小さな円筒の中にどれだけたくさんの電気を詰め込めるか、が競われていた。ただ、当時の充電池は自己放電量が大きく、使いたいときに容量の半分しか残っていないなんてことも普通。また、長く使える(もちがいい)充電池は、充電できる回数が少ない、という相反する科学を背負わねばならない。これもまた一般家庭では使いにくかった。

毎日充電することをいとわないごく少数のヘビーユーザーに特化した商品ではなく、対象ユーザーを一般のお父さん・お母さんレベルに合わせ、ごく普通の乾電池のように使える充電池を作ろう。いわば「容量競争ではない、使い勝手を優先せよ」という当時としては大英断のプロジェクトが開始されたのだ。

2005年、あえて容量を減らした、しかし充電回数を多くした《エネループ》と名づけられた充電池が発表された。なんと、このエネループは10年間使わないでいても70%の容量を保つ、というほぼ乾電池と変わらない使いやすさを持っていた。
「何回でも使える」「いつでも使える」エネループは省エネという時代の追い風にも押され、すこしずつ広まっていった。以来11年、前述のような驚くべき数字だ。

ところで乾電池と充電池の上手な使い分けをご存じだろうか。日本の一般家庭には60〜70本の乾電池があるといわれているけど、その全部をエネループに替えても省エネにならないかもしれない。いやいや、逆にお金とエネループの無駄使いになるかもしれない。

たとえば、「いつ電池交換したっけ?」と忘れてしまうくらい長持ちする掛け時計や目覚まし時計、災害用LEDライト、デジタル体重計、エアコンのリモコンなどは乾電池でOKだ。
掛け時計の電池はどんなに短くても1年はもつから、それをエネループ(スタンダードモデル・2100回充電可能)に替えると、単純計算では2100年間繰り返して使えるってことになる。いくらなんでも無駄すぎる。そう、あまりに長持ちする機器には安価なアルカリ電池、マンガン電池で十分なのだ。乾電池と充電池、上手に使い分けていただきたい。

おっと、話が前後するけど乾電池は10年間使わずにおいても90〜95%の容量を保っている。これが乾電池の大きな特徴なのだけど、エネループは自己放電を抑えて、充電池としては実にすぐれた70%というエネルギー保持性能を誇っている。

ではエネループに替えた方がいい機器は、というとさっきの逆。日常的に使うもの、そして短期間で電池を消耗、交換しなければならない機器だ。カメラのストロボ、シェーバー、電動歯ブラシ、白熱球ライト、ラジオ、玩具といったところだろう。

当たり前だが、優れた充電池は優れた充電器があってこそだ。いちばん最初にエネループを購入するときには充電器も一緒に購入することになるのだが、どうせなら「過充電を防止」「最適な充電モード」「電池残量チェック」「充電池の買い替え目安診断」などなど高性能で便利な機能がついているタイプを選ぶといい。

いまエネループは用途に合わせて3種類ある。単3形では電池容量1900ミリアンペア・繰り返し回数約2100回の「スタンダードモデル」。電池容量2500ミリアンペア・繰り返し回数約500回の「ハイエンドモデル」。電池容量950ミリアンペア・繰り返し回数約5000回の「お手軽モデル」だ。




Artwork for [eneloop]

eneloop_poster

この意匠表現は『ターザン』が独自に創作したもので、記事中で紹介される組織、商標、商品を広告宣伝するものではありません。


Tarzan No.708 呼吸と姿勢 掲載〉
構成・文/内坂庸夫 撮影/山城健朗 イラストレーション/寺西 晃