Apr29Sat

キズパワーパッド [絆創膏]

2016.09.29

あなたの体液は世界一の治療薬。

ヒトのカラダはつくづくよくできている、もちろん生き延びるためだ。活動エネルギーが少なくなると燃料切れの信号として「空腹感」を知らせる。燃料が補給されない場合は「ハンガーノック」という荒業を使い、本人を強制的に「倒して」活動を止めてしまう。

成人なら体重のおよそ60%を占める体液のうち、体重の1〜2%相当を失うと「水を飲みたい」と口渇感に訴え出ることは、誰でも知っている。

外気温が高かったり、筋肉を激しく動かしたために、カラダが熱くなれば「汗をかいて」気化熱効果で体表を冷やすし、逆に体温が低いときは鳥肌を立てて体表面積を少なくして放熱を最小限に留める。
それで十分でないときは骨格筋を素早く動かし「カラダを震わせて」筋温を上げようと懸命に努力する。活動過多になれば「疲れ」を感じさせて休ませようとするし、それでもやめない場合は「眠気」「めまい」「頭痛」「幻覚」などの体調の不良を示して最後通告をする。

それでも言うことを聞かないときは、もうしょうがない、強制終了だ。安全ブレーカーが落とされ「意識朦朧」「前後不覚」で「ぶっ倒す」。大丈夫、倒れる=横になることで、心臓とカラダ(特に脳が)水平になって血液循環が容易だ、活動過多だけが理由なら回復は早い。だから、体調不良や疲労困憊でヘタれるときは、机に突っ伏すより、椅子に座り込むより、ばったり大の字に横になった方がいい。

ともあれ、ヒトは200万年前からカラダの声を聞き、素直に従って生き延び、繁栄してきた。
当然ながら、太古の昔はカラダの声を聞けども、ヒトはケガだらけの毎日。擦り傷、ひっかき傷は当たり前であったはずだ。そんな軽い傷なら、出血したその血液成分の血小板、フィブリンなどが活発に働いて止血をし、表面にかさぶたを作ってくれる。なるほど、カラダは自動的に止血し、傷を保護し、修復してくれるのか。ここでもカラダはよくできている。

と、思っていた。間違っちゃいないが、もっといい方法をヒトは考案している。痛みを少なく、治りを早く、そしてキレイに治す商品を作っている。

第二次大戦、多くの兵士が病院に運ばれた。ひどい火傷を負った兵士たちを、早くキレイに治せないか、と研究していたのがハーバード大学のオリバー・コープ博士。1942年にボストンのナイトクラブ〈ココナッツグローブ〉で大火災が発生、死者負傷者あわせて700人あまりという歴史に残る大惨事である。このときコープ博士の病院に運ばれた数百人の火傷患者には薬品も包帯もガーゼも行き渡らない。医者たちは水疱を破らないよう患部を保護する方法をとったのである。その結果、従来通りにガーゼをあて、滲出液を取り除いて、かさぶたができた患者より、水疱をそのままにしておいた患者の方が早く回復した。

水疱の中の滲出液(体液・リンパ液)にこそ傷を治す力があるのではないか、コープ博士は自信を深める。これが、傷口に自らの滲出液を十分に保つことで、傷を早くキレイに治す湿潤療法(モイストヒーリング)の最初である。

その治療を個人で行えるようにしたのが圧倒的シェアを誇り、皮膚科医からも支持されている〈ジョンソン・エンド・ジョンソン〉の《キズパワーパッド》、2004年に日本に登場している。

部位に応じて全7種(サイズ違いあり)。どんな傷にもOKというわけではない、ニキビ、湿疹などに使ってはいけない。www.band-aid.jp
部位に応じて全7種(サイズ違いあり)。どんな傷にもOKというわけではない、ニキビ、湿疹などに使ってはいけない。www.band-aid.jp

パッド内側のハイドロコロイド粒子(親水性ポリマー)が傷口にしみ出る滲出液を吸収して膨らみ、ゲル状のクッション材となる。これが湿潤のフタ、滲出液が傷口で活動できる状態を保ってくれる。

手順はこうだ。傷を水道水で洗い、菌や汚れを取り除いて清潔なタオルやガーゼで水気をとり、傷口にあわせたサイズのパッドを貼るだけ。かさぶたができないから傷口からしみ出る滲出液は多く、その細胞回復活動も活発だ、傷の修復が早い。すべての人にあてはまるわけではないが、同じ傷なら3.5倍も治りが早いとされる。
また、パッドは完全防水でぴったり皮膚に貼りつき、傷ついた神経を空気に触れさせないので傷の痛みが少ない。接着力も強くシャワーや水仕事でもはがれにくい。

キズパワーパッドは従来の絆創膏とは違い、管理医療機器だ。貼りっぱなしはいけない。自らが医師になって傷口を観察し、滲出液がちゃんと出ているか(パッドが余剰な滲出液を吸って白くぽっこり膨らんでくるとOK)、痛みはないか、化膿していないか、などをチェックしよう。滲出液が出なくなったら傷口がふさがった証拠、キレイに治っている。傷跡を気にする女子とその母親たちにも人気の理由である。

あ、大事なこと。水洗いしたあと、消毒薬を塗ってはいけない。薬剤が傷に残り、せっかくの滲出液の効果を無にしてしまうから。


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滲出液を有効に使う湿潤療法。
傷口を乾燥させてかさぶたで覆う従来の方法だと、かさぶたが傷の中の多くを占めてしまい、滲出液の出る量も活動量も少ない。左の湿潤療法だと滲出液はこんなイメージだ。




Artwork for [KIZUPOWER PAD]

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この意匠表現は『ターザン』が独自に創作したもので、記事中で紹介される組織、商標、商品を広告宣伝するものではありません。


Tarzan No.704 今日から始めるトレーニング 今日トレ! 掲載〉
構成・文/内坂庸夫 撮影/山城健朗 イラストレーション/ジョージ安藤