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Mercedes-Benz SLC180 [メルセデス・ベンツ SLC180]

2016.08.19

重厚感のある速さが楽しい!成熟した大人のためのモデル。


取材・文/石井昌道:雑誌編集経験のあるモータージャーナリスト。
撮影/小川朋央:自然を愛する、のんびり、ときどき突撃型カメラマン。
本誌クルマ担当/ワタベ:帰ってきた旧担当。車の好みは味のある軽自動車。

ワタベ:今回は長野県の志賀高原にやってきました。
小川:東京に比べると涼しくて空気が綺麗! 夏場の屋外撮影は辛いことが多いけれど、今日はモチベーションが上がりますね。
石井:この辺りのワインディングロードは大・中・小とさまざまな曲率のコーナーがあるし、アップ&ダウンも多くてクルマ好きにとっては走りがいがある。FRのオープン2シーターにピッタリだな。

メルセデス・ベンツはスポーティなモデルにも力を入れているが、コンパクトFRのSLCは最も小気味いい操縦性を持つ。日本で2011年から2014年までオープンカー販売台数No.1。
メルセデス・ベンツはスポーティなモデルにも力を入れているが、コンパクトFRのSLCは最も小気味いい操縦性を持つ。日本で2011年から2014年までオープンカー販売台数No.1。

ワタベ:草津を通ってきたんですけど、硫黄の臭いがすごかったです。火山活動が活発になっているからですかね?
石井:そうやって臭いで自然の息吹を感じられるのもオープンエアドライビングの醍醐味だよ。ただ真夏で陽射しがキツい日はジリジリと焼かれるようで、はたから見るより辛かったりするけどね。逆に冬は、足元は暖房でぬくぬく、頭はヒンヤリで、文字通り頭寒足熱で快適だったりする。SLCはルーフの開け閉めが気軽に行えるし、閉めるときっちりとしたクーペになるから快適でいいよな。
小川:たしかに。電動で開閉しているときに見え隠れする内部のメカも男心をくすぐります。
石井:もう20年も前に登場した初代SLKでメルセデスとしては初めて採用したのがバリオルーフ。これが本当によくできてるんだよね。
小川:バリオルーフ?
石井:昔ながらの一般的なオープンカー用ルーフは幌のソフトトップ。それに代えてメタルのハードトップにして電動開閉式にしたものがバリオルーフだ。閉めているときはソフトトップに比べて遮音性が高く、外気温の影響も受けにくい。クーペとオープンの両方を味わえるというわけだ。オープン時にはルーフ部分を収納するのにスペースを食うのが課題だったけれど、初代SLKでは凝った折りたたみ機構を開発してコンパクトなボディでもスタイリッシュに仕上がったのが偉かった。昔からある形態だけれど本格的に普及させたのはSLKが最初で続々とフォロワーが生まれた。
ワタベ:今日はワインディングをいっぱい走りましたけれど、楽しくて、まったく怖さがないのがすごいと思いました。
石井:最近のメルセデス・ベンツはずいぶんとスポーティになってね。それは悪いことではないけれど、SLCは昔ながらの抜群の安心感や重厚感、いい意味でのオーバークオリティ感などがあって、個人的にも好きなんだよね。1985―1995年のEクラス(W124)などはいまだに根強い人気を誇っていて、往年の良さが残っているんだよね。
小川:そんなに速くはないけれど、なんか楽しかったです。
石井:それが重要なポイントだ。日本はマツダ・ロードスターやホンダS660など、速くなくても楽しいスポーツカーを作れる貴重な国だけれど、SLCはそれにプラスした安心感と高級感で大人が満足できるモデルに仕上がっている。運転して楽しい、心が豊かになるというのは、こういうことにもあるのだということを教えてくれる存在なんだよ。


Q シート後方の透明な板はなんですか?

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シート後方には、万が一横転したときなどに乗員を保護するロールバーがあり、そこに装着されている透明の板がアクリル製のピボット式ドラフトストップです。手動で出したり格納したりできるようになっていますが、ようはオープン走行時に後方から巻き込む乱流を防ぐためのものです。小さなパーツですが効果は絶大で、100km/hレベルでも髪の毛がほとんど乱れることなく快適なオープンエアドライブが楽しめます。風がなさすぎて物足りないという人もいますので、出し具合によって調整できるのが嬉しいところ。その他、寒い日にはヘッドレスト部から温風が吹き出すエアスカーフなど、セレブのためのオープンカーとしてぬかりはありません。

Q ソフトトップじゃないルーフはいつから採用され始めたんですか?

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昔からある幌などのソフトトップではなく、メタルや樹脂製などのハードトップで格納式となっているのがバリオルーフです。こういった形態は1930年代には存在していたようです。日本では1992年にホンダCRーXデルソルが電動格納式ハードトップを採用しています。ハードトップの格納式で大変なのは幌よりも嵩張ること。その昔は大型の高級セレブ仕様ならばスペースの課題をクリアしましたが、近年では難しかったのです。ところが1996年発売の初代SLKは折りたたんでコンパクトに収納できる画期的なルーフを開発。トランクルームの犠牲を最小限に抑えて実用性も併せ持つということに関しては、世界初のモデルと言えます。


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Mercedes-Benz SLC180

車種が大幅に増えているメルセデスは車名の最後のアルファベットが車格を表すよう再整理中。従来はSLKと呼ばれていたが、マイナーチェンジを機にCクラス相当ということでSLCに改めた。1.6Lエンジンも新設定。

●全長4,140×全幅1,845×全高1,305mm●エンジン=1,595cc、直列4気筒DOHCターボチャージャー付き●変速機+駆動方式=9速AT+FR●燃費=14.9km/L(JC08モード)●乗車定員=2名●カラー=9色●車両本体価格=4,907,407円●問メルセデス・ベンツ(TEL)0120・190610

〈Tarzan No. 701掲載〉
取材・文/石井昌道 撮影/小川朋央