Jun24Sat

とっておきのトレイルが眠る国、Aotearoa(白く長い雲のたなびく地)へ!

2017.05.30

年に1度だけ走れる、うんと貴重なトレイルを求めて、約6000人がクィーンズタウンに集まった。



クィーンズタウンは何でも揃いすぎている。1時間も歩けば網羅できるぐらいの大きさの街にもかかわらずだ。美食あり、美しい景色あり、アウトドアアクティビティも一年を通して220個以上もある。多くのキウイ(ニュージーランドの人たちの愛称)にとって、夏、冬の休みの目的地はここ、クィーンズタウンになるのが十分にうなずける。

なにせあらゆるものが揃った街と、自然との距離の近さが、半端ではない。東京だと新宿から高尾山までは電車で55分。が、この街は徒歩たったの15分でトレッキングも、MTBも楽しめるような山がある。

MOTATAPU
街に飛び込むような気持ちいいトレイルが随所に。

そんなアウトドアの中心地で、注目を集める「モタタプ」というイベントがある。地元のスポーツショップの店長が言うには、「お祭りみたいな雰囲気なのに、レベルの高い本気の人も、短距離だけの初心者もいて、幅が広い」。

モタタプには、大きく3つの特徴がある。幅が広いと言われるのがそのひとつで、5つのレースから構成される。ダートのトライアスロンとして知られるX-TERRA(エクステラ)や47kmのMTB、ウルトラと呼ばれる51kmとフルマラソンと呼ばれる42kmのトレイルランニング、15kmのマイナーズトレイルという5つに分かれており、約6000人が参加する。それぞれ、スタート地点とスタート時間が異なり、終始混雑がない。

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15kmの部は老若男女、参加者の幅が広い。

加えてこの大会のもうひとつの特徴は、年に1回しか通れない私有地を走ること。主催者は地元の農場主と、特別景色が美しく変化に富んだ道を巡り、コースを作り上げていく。

自慢のルートは、氷河によって削られた雄大な山々の間を縫って走り、空に浮いているような気分に浸れる。木々をかわすトリッキーなコースではアドベンチャーレース感覚も味わえる。また、鉱山道のように、岩の間を抜ける雰囲気のコースもある。まさにゴールまで参加者を飽きさせない。

MOTATAPU
ゴール間近は、マウンテンバイクともコースを共有。

主催者はバリエーションに富んだコースに、さらに楽しみを織り交ぜる。ゴール後、泥んこながらも充実感を滲ませるMTB選手によれば、「20以上の川を越えてきた」ようで、なかには漕いでは渡れないぐらいの水深で、テクニカルな箇所もあったらしい。

しかし、なぜそこまで川を渡るの? と疑問も湧いてくる。その答えは「モタタプ」という名だ。先住民のマオリの言葉で、「聖なる川」を意味し、流域のいくつかの町は1800年代、ゴールドラッシュで栄えた。モタタプのスタート地点や、ゴールを繋ぐ川は、先住民には貴重な水源として機能しただろうし、金脈としても人を惹きつけてきた。

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ダートのトライアスロン(X-TERRA)。ひと目で選手レベルの高さが窺える。

参加できるカテゴリーが多く、歴史に彩られ、地形の変化に富んで、走るだけで楽しい大会なのはもちろん、「モタタプ」にはもう一つ驚かされる。それが3つ目の特徴だ。参加者にとって大会は「特別」ではない。

日本では「キミが走るの?」と見まごうような人たちが、本気で楽しんでいる。例えばモデルばりの女性ランナーや、とにかくカラダの大きいランナーとは言い難い人、妙齢のおばさま方に、ハイキングですれ違いそうな恰幅のよいおじさんなどなど。みんな一様に、アウトドアが単なるファッションではなく、「気分がいいから好き」というのが、トレイルを下るときに緩む表情からひしひしと伝わってくる。そう、ニュージーランドは、アウトドア偏差値が相当に高い。もちろん環境はあるけど、日々の「楽しみ」として確かに取り入れている。

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15kmコースの一部。短いコースでさえ、こんなに贅沢なトレイルが待っている。

このイベントに触れるだけで、アウトドア文化の成熟にガツンとやられるし、憧れる。こんな雰囲気の中で走ったら、モタタプだけじゃなくて、外で遊ぶのが絶対好きになる。だから行ってみないか、白く長い雲のたなびく国、ニュージーランドへ。



WE LOVE MOTATAPU INTERVIEW

MOTATAPU

どんな人でも楽しめる。そんな大会が欲しかった。

ダニエル・シャーマンさん(モタタプ主催)

始まった当初は1000人だった参加者も、今では6000人に増えました。というのもモタタプという大会が多数のカテゴリーを設けている点で特徴的だからです。週末に、お父さんはマウンテンバイクのカテゴリーに出て、お母さんはマイナーズトレイル(15km)に出る。脚に自信のある人はウルトラ(51km)に出る。レベルやスキルが違うとしても、同じ大会を楽しめるので、翌年は違うカテゴリーでリピートする参加者が後を絶ちません。


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ニュージーランドの美しい大地を眺める機会。

ハミッシュ・カーターさん(トライアスリート)

アテネ五輪のトライアスロンで金メダリストになって、2007年に現役を引退しました。その後のトレーニングは、2日に1回、30分走る程度。現役の時に十分練習したから(笑)。モタタプは過去に3回、マウンテンバイクで参加して、気に入っています。年に1回しか走れないコースばかりですから。今回はトレイルランの51kmに参加します。普段のトレーニングよりも十分に長く走って準備したから、あとは景色を楽しみたいね。


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コースバリエーションは文句なしの大会だよ。

ヘイデン・ロールストンさん(元プロロードレーサー)

プロロードレーサーとして、ツール・ド・フランスにも出たし、オリンピックではメダルも取れた。今回は、長いキャリアの中で初のマウンテンバイクでのレース。すごく楽しみだね。なにせニュージーランドはどこを走ってもキレイだから。今の僕は、トレーニングは軽め。気持ちが落ち込まないように、歩いたり走ったりがメイン。キツく追い込むかって? 朝起きて、予定がないっていいもんだね(笑)。だって、25年間毎日燃え尽きていたから。


QUEENSTOWN
成田空港、羽田空港(7月21日〜)からニュージーランドの国際空港、オークランドで国内線に乗り継いで約13時間。今回の舞台、クィーンズタウンに到着。この街は南島の南部に位置し、世界のアウトドア好きが集まる。

『Tarzan』719号ではクィーンズタウンのおすすめショップもご紹介!


Tarzan No.719 トレランGO! 掲載 〉
取材・文/渡部 忠(本誌) 撮影/山城健朗 取材協力/ニュージーランド政府観光局、ニュージーランド航空