Jun24Sat

1年間の“革命”を振り返って。

2017.06.18

食事革命に取り組み始めたのは30歳を間近に控えた昨年の早春。それから現在に至るまで、すでに1年あまりが経過した。

日本にいた頃は好きなものを美味しく食べられればいいという感覚で、イタリアに渡ってからは外食続きだった僕だが、管理栄養士の石川三知さんや専属シェフの加藤超也さんとの出会いで、食への志向性が180度変わった。まさしく革命と言ってもいいくらいに。

食事を意識するようになってからの一番の変化は、食材の栄養素についての意識の向け方だった。なぜ、この食材を食べる必要があるのか?今日食べている食事がコンディションやパフォーマンスにどのような効果をもたらしてくれるのか? そうしたことをしっかり理解したうえで自分のカラダに取り入れるようになったのだ。

ここまでご紹介してきたように、それまで食べる機会の少なかったきのこや海藻、豆類(※1)などからは不足しがちなビタミンやミネラルが効率的に摂れる。タンパク質は1種類でなく複数の食材から摂ることで必須アミノ酸をバランスよく補給できる。糖質補給(※2)のタイミングや量を調整することで必要なエネルギーを補いながら、脂肪を燃やしやすいエネルギー回路を活性化する。オメガ3(※3)系の油を取り入れて、アレルギーや炎症の予防効果に期待するなどなど。

1年前の僕が今の僕の食卓を目にしたらさぞ驚くことだろう。まず、食品数が圧倒的に増えたことがひとつ。主食のおにぎりにおかずは卵焼きだけといった食事は今では皆無。サラダやマリネの中にもさまざまな野菜やタンパク質が取り入れられている。
それに、味つけのほとんどはシンプルな塩コショウを少量使うだけ。どちらかというと濃い味つけを好んでいたかつての僕からは考えられない。

イタリアに渡ってからは比較的、肉を食べることが多かったのだが、加藤シェフが新鮮な魚介類を使った料理を提供してくれることが多くなり、今では魚料理が自分のカラダに合っていると感じるようになった。新鮮な魚をお刺し身やカルパッチョ、サラダと和えて食べたり、シンプルにソテーした料理を口にした後は、カラダが喜んでいる感覚がはっきりとある。

さらに、極めつけ。
「一体どうしたんだ、佑都?」
かつての僕は今の僕にこう言うかもしれない。
「あんなに大好物だったドルチェを食べないなんて?」

子どもの頃から甘いものに目がなかった僕は、イタリアのレストランで食事をするときは、必ずと言っていいほど食後のドルチェを楽しんでいた。それが今では、外食でほとんど口にすることがなくなったのだ。

革命直後は、どうしても食べたくなったときは無理に我慢せずにカラダの欲求のまま食べようと決めていた。だが今は甘い物に対しての欲求をコントロールできるようになり、どうしても甘い物が食べたくなった時用に加藤シェフが白砂糖不使用プラス、糖質量を控えたドルチェを作ってくれ、外食先などで食べず、自宅に帰ってきて食べるようになった。

精製された白い砂糖は血糖値の乱高下につながる。僕のようなアスリートではなくても、習慣的に摂取していいことはひとつもない。だから今では、白砂糖を使った料理も口にしていない。

長友
食事革命が始まり、30歳からの1年は大きな転機となった。

「ヨガ友」と食事はトレーニングの両輪。

こうしたさまざまな試みを実行していくことで、体調には目に見える変化があった。
それまでは試合前に頭やカラダが重いと感じることが多かったが、すっきりとクリアになった。また、以前は花粉症の季節になると、くしゃみや鼻づまりなどの症状に悩まされていたのだが、現在は花粉症シーズンになってもほとんど症状が出なくなったのだ。

砂糖断ちなのか、油のせいなのか、はたまた糖質補給の工夫のせいなのかは分からない。何しろ、食事に関してはあれもこれもほとんど一度に革命を起こしたので、体調変化の直接の理由はこれと確定できないのだ。

ただ、これまで当たり前だと思っていた食事の問題点をひとつひとつ改善し、より効率的な栄養補給に努めたことが、いい結果に繫がったことは間違いないだろう。

脱臼などのケガの連続経験から、僕はオリジナルでストレッチ要素と体幹トレの要素を組み合わせた「ヨガ友」を生み出した。次にケガの予防やパフォーマンスアップのために食事を武器にできないかと考えた。今ではどちらも、僕にとって必要不可欠なトレーニングの両輪だ。

僕は今年の9月で31歳を迎える。ビジネスマンとしてはまだまだこれからの年齢だが、プロサッカー選手としては最も脂が乗り切った、ある意味で最終コーナーに突入することになる。

現役生活を続けていく限り、食事トレーニングはもちろん続けていくつもりだ。ストレングスというよりはコンディショニングがより重要になってくるからだ。この1年間の経験で、今後も最大限の取り組みをしていく意識を持つことができた。

『ターザン』での連載はこの回で最終回となる。だが、僕の食事革命はまだまだこれからも続く。


※1 きのこや海藻、豆類
乾物を利用した石川さんからの食事提案により、加藤シェフが日本から大量の乾物類を持ち込むように。

※2 糖質補給く
糖質オールカットから始まり、セミケトンの糖質補給、現在のよりマイルドな糖質補給へと変化を遂げた。

※3 オメガ3
カラダに必要な必須脂肪酸。食用オイルでは、亜麻仁油、エゴマ油。魚であれば青魚などに多く含まれる。


●ながとも・ゆうと 小学校1年でサッカーを始め、東福岡高校、明治大学を経てFC東京でプロデビュー。2010年イタリアに渡り、現在インテル・ミラノに所属。


「食事革命」は今回をもって終了となります。1年間のご愛読ありがとうございました。なお、今年の秋頃に、新規コンテンツを加えて書籍化の予定です。乞うご期待!


Tarzan No. 720 「怒り」学 掲載 〉
構成/石飛カノ 撮影/中島慶子 監修/石川三知(Office LAC-U)