Jun24Sat

食事革命の基本に立ち返る。

2017.06.02

2016年の2月頃から僕が日常の食事スタイルに変化をつけたことは、すでにお話しした通りだ。最初のうちは大好物のごはんをすっぱり断ち、1日に摂る糖質食品といえば朝食のスムージーの材料のフルーツくらいのもの。あとはタンパク質と野菜中心の食事を摂っていた。

ところがたびたびエネルギー不足に陥るようになり、それ以降は昼食に炭水化物を摂取するように切り替えたことももうご存じの通り。

糖質の量を制限し、脂肪酸由来のケトン体を利用するエネルギー回路を作るのがケトン食だ。完全なケトン食は1回の糖質摂取量がおよそ20g以下といわれている。

これは、バナナ1本とリンゴ1個を食べたら、それだけでオーバーしてしまう糖質量。相当ストイックな食事となる。一方のセミケトン食の1回の食事での糖質摂取量はおよそ40g以下。昼食に炭水化物を取り入れ、さまざまな栄養素をバランスよく摂取することを心がけた。

さて、それから約半年経った現在の食事の一例をご紹介しよう。

〈練習がある日〉
朝食/フルーツと野菜のスムージー、豚肉と卵のシンプルなチャーハン
昼食/サラダ、白米&玄米、主菜、副菜2品、スープ
夕食/サラダ、スープ、前菜、温菜、主菜

〈試合がある日〉
朝食/フルーツと野菜のスムージー、米粉パンの目玉焼き乗せ
昼食/サラダ、ごはん、鶏胸肉のソテー
試合後/バナナ、白米、肉または魚
帰宅後/温かいスープ、状況によっては炭水化物または主菜

朝食
とある朝の朝食は、豚肉と卵のチャーハンとスムージー。撮影/加藤超也

お気づきだろうか。昼だけでなく朝や試合後、ときには夜。炭水化物を食べる機会が増えているということに。
現在は一度の食事で摂取する糖質量を40〜60g(※1)程度に設定し、朝と昼を中心にエネルギーとして必要な炭水化物を摂取しているのだ。

■管理栄養士・石川三知さんコメント
「低血糖状態で起きる朝は、果物とともに炭水化物を入れた方が脂肪が燃えやすく(※2)なり、食事によるウォーミングアップの効果が期待できます。もちろん、試合のある日ならなおさら。運動中に頭やカラダを瞬時に働かせようとするならグリコーゲンは必要不可欠。クイックネスな動きが要求される長友さんのようなプレースタイルの場合、脂肪酸やアミノ酸だけではエネルギーとして絶対量が少ないからです。そこで、筋肉中のグリコーゲンを枯渇させず、血糖値を維持できるような良質な糖質を摂っていく必要があるのです」

以前は試合のある日の朝食もスムージーのみだったが、現在はごはんを一緒に食べることが習慣になっている。もちろん、試合にフル出場してもエネルギー不足に陥ることはない。それどころか、コンディションは絶好調。

アスリートは状況によってエネルギーの消費が一定でないことが多い。ハードな練習や試合などがある場合は、通常の食事にプラスして炭水化物を補うこともある。常に自分の感覚を大事にして、自分のカラダと相談し、栄養を欲しているときは補給するようにしている。ただし、前文にも書いたように、一回に補給する炭水化物の量は摂取過多にならないようにコントロールしている。

動物、植物、遅筋、速筋。多様なタンパク質を補給。

次はカラダづくりに欠かせないタンパク質についてだ。
タンパク質の補給の仕方には、これまでにもさまざまな工夫を凝らしてきた。一度の食事の主菜は1種類の食材ではなく、複数の食材を摂ること。低脂肪食材をシンプルな調理法で食べること。良質の飼料で育てられた食肉を選ぶこと。

ところが、こうした工夫ができるのは自宅での食事の場合。クラブハウスで摂る食事の主菜は、基本的に毎回同じ。8〜9割は鶏胸肉のソテー、ごくたまにそれが魚や牛肉のソテーに替わるくらいでバリエーションが少ない。細胞に供給するための多種多様なアミノ酸を補給するというのは、まず無理な状況だ。

その代わりといっては何だが、自宅での食事、とくに夕食は鶏肉以外のさまざまな食材を取り入れてタンパク質摂取を心がけている。

■加藤超也シェフコメント
「動物性のタンパク質食品を提供するとき、最近とくに意識しているのは白身と赤身をバランスよく組み合わせること。マグロや牛肉などの赤身はミオグロビン(※3)という赤身色素が豊富な、いわゆる遅筋。タラやヒラメ、鶏肉などの白身は速筋。前者は鉄分が多く、後者は低脂肪高タンパク食材です。さらに、日本から持ち込んだ高野豆腐を活用したり、イタリア現地で手作り豆腐や納豆を買えるお店を見つけて定期的に入手したりと、植物性タンパク質を提供することも心がけています」

こうした炭水化物とタンパク質摂取のセオリーで目指しているのは効率的にエネルギーを持続させ、ときには瞬発力を発揮し、ケガに負けないカラダを作ること。今現在の時点で僕が辿り着いたパフォーマンス食の大事な基本である。


※1 糖質量を40〜60ℊ
1日の糖質補給量はトータルで約170g。血糖値を計測しながらこの補給量に落ち着いた。

※2 脂肪が燃えやすく
脂肪をロウソクとするなら糖質はロウソクの芯。芯に火がつかなければ炎は上がらず脂肪は燃えない。

※3 ミオグロビン
血液中の酸素を筋肉に運搬する。持久運動を得意とする遅筋に多く、瞬発運動が得意な速筋に少ない。


●ながとも・ゆうと 小学校1年でサッカーを始め、東福岡高校、明治大学を経てFC東京でプロデビュー。2010年イタリアに渡り、現在インテル・ミラノに所属。


Tarzan No.719 トレランGO! 掲載 〉
構成/石飛カノ 撮影/中島慶子 監修/石川三知(Office LAC-U)