May30Tue

時差ボケに対処する食べ方。

2017.05.19

世界を舞台に活躍するアスリートやビジネスマンは皆そうだろうが、飛行機での移動は避けられず、むしろ日常茶飯事になってくる。
僕の場合でいうと、セリエAイタリアアウェー移動、インテルの国外合宿、年2回のオフでの日本帰国がデフォルト。それに加えてワールドカップの予選が始まると、日本、アジア、中東やオーストラリアまで移動する機会が多くなる。

そこで問題になってくるのが時差との付き合い方だ。
日本とイタリアの時差は7〜8時間。ミラノまでの直行便のフライト時間は約12時間半。昼過ぎに日本を出発すると、ミラノ到着は夕方の6時過ぎになる。逆に午後にミラノを出ると(このときの飛行時間は約12時間)日本には午前中の到着となる。

半日がかりの移動で、しかも1日分の睡眠時間に匹敵する時差。これで時差ボケにならないわけがない。ここ数年移動の機会が多く、感覚的には免疫がついている僕でさえも、例外ではない。
そのときの状況にもよるが、ワールドカップ予選で日本に帰国したときは、空港到着から2〜3時間後にはピッチに出て練習に参加するケースもある。なかなかにハードだ。

とはいえ、これまでは特別な時差ボケ対策を行っているわけではなかった。出発前には到着先の時間に合わせて食事を摂るようにしたり、機内では水分補給をこまめにすること、それと機内食を食べ過ぎないことを意識していたくらいだ。他に何かいい方法があれば取り入れてみたいと思ってはいた。

その機会がやってきたのは、3月末、アジア最終予選のタイ戦を終えて日本からミラノに到着した日のことだ。夕食時、加藤超也シェフからひと皿のスープが提供された。鶏団子のクリームスープだという。ひと口飲んで、僕が思わず言った言葉は、
「カラダに染み渡る〜」
だった。

聞けば、このひと皿は管理栄養士の石川三知さんから伝授されたジェットラグ(時差ボケ)対処のメニューに、加藤シェフがアレンジを加えたものだそうだ。

鶏団子のクリームスープ
カラダに染み渡る鶏団子のクリームスープ。(撮影/加藤超也)

色、香り、食感、温度で心身をソフトランディング。

■管理栄養士・石川三知さんコメント
「飛行機の中はとても乾燥しています。機内で水分を意識して摂っているつもりでも、到着した後に水分補給をすることをほとんどの人が忘れてしまいがちです。そこで、何か食べようとなったときは水分がたっぷり摂れるスープや鍋などがおすすめなのです。
もし、現地に夜到着してすぐに眠るという状況であれば、胃腸に負担のかからない消化吸収のいい食事を心がけることが重要です。
体力の回復を促すためにタンパク質を摂るのであれば、基本的に油脂が少なくて薄かったり柔らかかったり細かい食材を選ぶことがポイント。薄切りの赤身肉、豆腐、鶏の挽き肉、白身魚などでタンパク質を確保します。この他に、野菜や炭水化物を摂れば完璧です。
食事で重要なのは栄養素だけではありません。色は白や茶色、味は優しくて香りもやわらかく、温かい料理にすることも大事なことです。フライトで興奮した気持ちやカラダをソフトランディングさせてあげるためです。サイエンスだけではなく、感性を取り入れることも私たちのような料理提供者には必要なことなのです」

なるほどと膝を打った。確かにものを食べるという行為は、栄養素を摂ることだけが目的ではない。そのときの気分や体調に合わせて、色や香りや食感でテンションを上げたり、逆にリラックスすることも食事から得られる恩恵だ。

実際、この食事をした後、しっかりと熟睡することができ、翌朝はすっきりした気分で起きることができた。これまでは、寝付けはするものの早い時間に目が覚めてしまうことが多く、「もう少し寝たい」という感じがあった。この日は「寝覚めがいいというのは、こういうことなのか」と確かに違いを感じることができたのだ。

■加藤超也シェフコメント
「最近ではジェットラグだけでなく、試合後、興奮してなかなか寝付けないときなどの対処法として、緑や黄色の食材をなるべくチョイスするようにしています。緑や黄色は安眠効果やリラックス効果がある色だからです。栄養価の高い緑や黄色の野菜を使って、温かいスープを作ることもあります」

最後に、ジェットラグ対策スープのベースとなる材料をご紹介しておこう。

・自家製鶏ガラスープ(鶏骨で5時間煮込んだブロード)
・ヨーグルト
・少量の生クリーム(乳糖不使用)
・塩
・少量の味噌
・鶏の挽き肉

もちろん、鶏ガラスープは手間のかかる自家製でなく、市販のものでも構わないそうだ。ビジネスシーンでの時差ボケ対策に一度試してみてはいかがだろう。


※1 アジア最終予選のタイ戦
3月28日、ホームの埼玉スタジアムで行われた最終予選。4―0で日本が快勝。現在グループBのトップ。

※2 飛行機の中はとても乾燥
飛行機内の湿度は20%以下といわれている。長距離路線では10%以下。普段以上の水分補給は欠かせない。

※3 ソフトランディング
食事で心身をリラックスさせ快眠に持っていくことで、12〜13時間後の体内リズムが整ってくる。


●ながとも・ゆうと 小学校1年でサッカーを始め、東福岡高校、明治大学を経てFC東京でプロデビュー。2010年イタリアに渡り、現在インテル・ミラノに所属。


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構成/石飛カノ 撮影/中島慶子 監修/石川三知(Office LAC-U)