Aug23Wed

味噌汁について再考する。

2017.04.16

日本の食卓になくてはならないもののひとつが味噌汁だということに、反論する人はまずいないだろう。アメリカではオレンジジュース、イタリアではエスプレッソが朝食に欠かせないように、日本の朝の食卓には必ずと言っていいほど味噌汁が添えられてきた。

ところが、現在は少し様子が違うようだ。
昔は朝食の味噌汁の具に豆腐が必要だったから豆腐屋さんが早朝から営業していた。パン屋さんが早朝営業なのと同じ理由だ。
今はというと、朝食の味噌汁用に豆腐を買う人が減ったせいか、早朝から営業しない豆腐屋さんも多いと聞く。時代の流れとはいえ、少し寂しい話だ。

逆に僕は日本を遠く離れた今だからこそ、味噌汁という食文化がいかに素晴らしいかを実感している。
そんなわけで、今回は日本人にとってのソウルフード、味噌汁について考えたいと思う。

子どもの頃に馴染んでいた味噌汁には、いりこ出汁が使われていたと記憶している。西日本、とくに四国や九州では味噌汁やうどんの出汁に「いりこ」と呼ばれる煮干しが使われるのが定番だ。僕の出身地、愛媛でもそれが当たり前だったのだろう。
今もそうだが、当時から具だくさんの味噌汁が好きで、好き嫌いのなかった僕は、味噌汁の中に入ったてんこ盛りの野菜をいつも完食していた。
といっても、子どもの頃は出汁を何で取っているかということなど分からない。出汁を変えることで味に変化が出ることを知ったのは大人になってからのことだ。東京ならかつお出汁、大阪なら昆布の効いた出汁というように。

イタリアに渡ってからも、味噌汁は頻繁に飲んでいる方だと思う。自宅での食事が和食メニューのときは必ず味噌汁が添えられている。頻度としては週に3回くらいだろうか。
その他、外食でミラノの日本食レストランに行くときも必ず味噌汁を注文することにしている。ひょっとすると、日本で暮らす独身男性よりも味噌汁を口にする頻度は高いかもしれない。

香り&消化吸収促進、味噌汁のさまざまな効用。

美味しい味噌汁は飲む者をほっとさせてくれる。味もさることながら、絶対的な安心感をもたらしてくれるのだ。
子どもの頃から慣れ親しんでいる味噌汁の味を舌で感じると、確かに気持ちが落ち着く。「ほっこりする」という感覚がぴったりだ。今、自分がカラダにいいものを口にしている実感もある。そういう安心感がパフォーマンスにいい影響を与えてくれていると思う。
さらに、栄養面でも発酵食品は積極的に摂りたい食品。それも味噌汁を飲む理由のひとつだ。

■管理栄養士・石川三知さんコメント
「出汁の香り(※1)は脳に働きかけ、リラックス効果を促すことが分かっています。それと汁物をまず最初に口にすることにも意味があります。食事のひと口目を汁物にすることで、「これから食事が入ってきますよ」という情報が消化器官に行き渡り、ウォーミングアップのような働きをするのです。消化器官にはそれぞれ持ち前の消化酵素があるのですが、それらの分泌が促されて消化吸収の用意が整います。
また、汁物を作る過程で具材は柔らかく、食べやすい状態になっています。根菜類など消化吸収がされにくい食材も柔らかくなり、栄養素が汁に溶け出すことで、美味しさはもちろん、栄養素の吸収率もアップします。
味噌の主原材料の大豆のタンパク質は発酵過程でアミノ酸に変化(※2)し、ビタミンも生成(※3)され、消化がよくなると同時に栄養価がアップすることも見逃せません」

これまで30年間の人生で味噌汁の味や効能を十分堪能してきたつもりの僕だったが、ここにきてまた新たなステージが開けてしまった。つい最近、専属料理人の加藤シェフが、びっくりするほど美味しい味噌汁を提供してくれたのだ。聞けば、魚のアラから取った出汁を使っているという。

エビと海藻の味噌汁
エビと海藻の味噌汁がココロもカラダも癒やしてくれる。(撮影/加藤超也)

■加藤超也シェフコメント
「魚料理をする際に余る頭や骨を活用し、タマネギやセロリなどの香味野菜をプラスして魚のブロード(出汁)を作ります。そこに昆布やかつお節を加えると、アミノ酸が豊富で栄養満点の出汁が出来上がります。これを味噌汁のベースとして利用し、提供しました」

その一杯を飲んだときは衝撃を受けた。これまで口にしてきた味噌汁とは旨みの深さが全然違ったからだ。深みのある味と風味がカラダに染み渡る感じがして、ひと口飲み、思わず「はぁ〜」という溜め息が出るくらい、感動してしまった。

こうして改めて考えてみると、味噌汁はある意味スーパーフードではないかという気がしてくる。ビジネスパーソンにとっても同様だ。朝一杯の味噌汁が、その日の仕事のパフォーマンスアップに役立つかもしれないと思うのだ。


※1 出汁の香り
食品メーカーと大学の共同研究でかつお出汁の継続摂取で疲労感の軽減作用があることが確認された。

※2 アミノ酸に変化
大豆に含まれる約30%のタンパク質が、発酵を促す酵素によってアミノ酸に変換されるといわれている。

※3 ビタミンも生成
麴菌が自身の代謝の過程で、ビタミンB群を中心とする多量のビタミンを生成する。


●ながとも・ゆうと 小学校1年でサッカーを始め、東福岡高校、明治大学を経てFC東京でプロデビュー。2010年イタリアに渡り、現在インテル・ミラノに所属。


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構成/石飛カノ 撮影/中島慶子 監修/石川三知(Office LAC-U)