Jun23Fri

心身を満足させるカレー。

2017.04.02

多くの日本人がそうであるように、僕は無類のカレー好きだ。回数でいうと10日に1回くらいの頻度でカレーを食べることもある。
洋食店はもちろん、定食屋に蕎麦屋に学食に給食に、果ては「海の家」にまで。日本全国どこへ行っても味わえるカレーは、よく言われているように、まさに日本人にとっての国民食だ。

お店それぞれのオリジナルの工夫もあり、そのレベルの高さは世界でもトップクラス(インドは別格として)ではないかと僕は思う。2015年に開催されたミラノ国際博覧会でも、日本のチェーン店が提供したカレーが大人気を博したと記憶している。
もちろんミラノでもレベルの高いカレーを出すお店は、あることはある。そのほとんどはインド料理店だが、僕がそうした本格派のインドカレーを食べることは滅多にない。というのも、僕の中の美味しいカレーのベクトルとはかなり違ったものだからだ。

ひと口にカレーといってもバリエーションはさまざま。人の好みもさまざま。正直に言うと僕はスパイシーなカレーが苦手なのだ。美味しいと感じるのはその真逆、家庭料理定番の甘いカレー。具は牛挽き肉か薄切り肉とじっくり煮込んだジャガイモ、ニンジン、タマネギ。これが子どもの頃から僕が慣れ親しんできたカレーだ。

長友家では仕事で忙しい母親の代わりに姉の麻步がキッチンに立つことが多かった。でも、カレーだけは例外。母の味というものがあり、今日はカレーという日には必ず母がキッチンに立って腕を振るった。僕たちもそんな“カレーの日”を楽しみにしていた。
母なりのこだわりがあったようで、いつも変わらない甘めのカレーは、僕にとってはどんなに評判のカレー屋さんのひと皿より美味しく感じられたものだ。

三度目の正直で好みのカレーが完成。

さて、加藤超也シェフが僕の大好物のカレーを初めて作ってくれたときのこと。こだわりのあるスパイシーなカレーで僕には少々刺激が強すぎた。そこで甘めの味にしてほしいと伝えると、3度目にはタマネギのとろみと甘さが際立った僕好みのカレーを提供してくれた。その美味しさはまさに感動もの。食べ終わってからも「今日のカレーは本当にウマかった」と何度も口にしてしまったくらいだ。

カレー
豚肉は脂質の少ない部位を使用して良質なタンパク質補給を。

■加藤超也シェフコメント
「初回のカレーは栄養素を一番に考え、豚肉(※1)、タマネギ、パプリカ、ズッキーニ、ナス、トマトとたっぷり野菜にオーガニックスパイスを使いました。でもスパイス感が強いカレーより家庭的なカレーが好みだと聞き、2度目は作り方を180度変更。タマネギでベースのとろみをつけ、素材のみでまろやかさを出しました。感想は「あと一歩」。3度目はとろみとマイルド感はそのまま、少量のリンゴをすりおろして甘みをプラス。素材で甘さを引き出したうえで、日本で定番のスパイスミックスを使って「幼少期から大好きだったカレーにかなり近づいた」というお墨付きをもらいました」

ここまでは僕が好んで食べていたカレーの味の話。そろそろ本題の栄養の話をしよう。カレーに含まれている各種スパイスには、さまざまな働きがあることはご存じの通り。スパイスの多くは漢方薬としても使われていると聞く。

■管理栄養士・石川三知さんコメント
「カレー粉の黄色い色のもと、ターメリックはウコンのことで、クルクミン(※2)という成分が豊富。肝機能の向上、免疫力を高める働きが期待できます。カレー特有の香りを出すクミンには消化促進作用があり、コリアンダーは胃腸の働きを助け、消化を促します。カレー粉には消化や吸収という「食べる」ことをサポートする作用が期待できるのです。
こうしたいい点がある反面、注意すべき点もあります。カレールーを使用して作る場合、脂質過多(※3)になるリスクがあること、意識的に具にタンパク質食品を利用しないと1回の食事当たりのタンパク質量が不足しがちなことなどです」

加藤シェフが作るカレーは市販のカレールーを使っていない。とろみと甘みはタマネギで、使う油脂の量も最低限。タンパク質食材の豚肉もたっぷり入っていて、使用するカレー粉にはもちろん、ターメリックもクミンもコリアンダーも含まれている。つまり、カレーのいいとこ取りをしているというわけだ。

ただひとつ、注意しているのは糖質食品のごはんを食べ過ぎないこと。最近は昼食や試合後にカレーを食べることが多いのだが、うっかりすると食欲がそそられてごはんの量が増えてしまう。
なので、しっかりと摂取したい栄養バランスを考えるようにしている。1杯目はごはんで食べ、2杯目は、ごはんの代わりに蒸し野菜にカレーをかけて食べるようにしている。
これで大好きなカレーも楽しめるし、栄養素もしっかり補え満足できる。無類のカレー好きならではの楽しみ方である。


※1 豚肉
糖質を効率よくエネルギーにするビタミンB1が豊富な豚肉は、カレーの具としてかなりおすすめ。

※2 クルクミン
ウコンに含まれるポリフェノールの一種。肝機能だけでなく脳機能の活性化にも有効という実験結果も。

※3 脂質過多
市販のカレールーに含まれている油脂の割合はエネルギーの約40%と多い。とろみづけの小麦粉も約40%。


●ながとも・ゆうと 小学校1年でサッカーを始め、東福岡高校、明治大学を経てFC東京でプロデビュー。2010年イタリアに渡り、現在インテル・ミラノに所属。


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構成/石飛カノ 撮影/中島慶子 監修/石川三知(Office LAC-U)