Mar28Tue

1日1杯の赤ワインを飲む。

2017.03.05

今回はアルコールの話をしようと思う。日本ではとくに酒の席とビジネスは密接な関係にあるので、読者のみなさんにとっても避けて通れないテーマではないだろうか。
これまでサッカーに打ち込み、プロの選手となってからはさらにコンディショニングに注意を払ってきた僕は、シーズン中にアルコールを口にすることはまずなかった。オフシーズンのお付き合いの席でも、日本では定番の乾杯のビール、あとは梅酒を少々口にする程度。下戸ではないが、アルコールとの付き合いといえるほどの経験は、ほとんどなかったのだ。

ところが、だ。イタリアに渡って以降、アルコールとの付き合い方に若干変化が表れた。
2011年、インテル・ミラノに完全移籍してからのことだ。ご存じの通り、ミラノはヨーロッパ屈指の美食の街。美味しいと評判の店を訪れるうち、何軒か行きつけのレストランができた。ある日、その店で食事をしていたとき、1杯のワインを薦められたのだ。
それはアマローネという名の赤ワインだった。
それまで僕は赤ワインを好んで口にすることはなかった。というか、どしっとした重厚感が苦手でアルコールの中でも「嫌い」と言ってもいいくらいだったのだ。ところが、アマローネの味わいは僕の好みにぴったりとフィットした。
「ワインってこんなに美味しかったのか」
そんな衝撃を受けたほどだ。

アマローネはヴェネト州で造られている、愛好家の中でも評価の高いワインだ。ちなみに、ヴェネト州はブーツ形をしたイタリア半島のブーツの履き口の後ろ側あたりにある。州都がヴェネツィアと言えば分かりやすいかもしれない。
主に使われるのは、コルヴィーナ・ヴェロネーゼという品種のブドウ。収穫してからすぐに搾るのではなく、陰干しするというひと手間をかけている。そのせいだろうか、レーズンを思わせる果実の香りが特徴で、非常に滑らかでデリケートな味わいが楽しめるのだ。
そして、このときから僕は日々の体調と相談しながら夕食時に1〜2杯のアマローネを嗜むようになった。

赤ワイン
夕食時、1杯のアマローネで心身のパワーをチャージ。

赤ワインポリフェノールで活性酸素のリスクを低下。

ワインを飲む習慣がついたのはなにも味わいだけが理由ではない。外皮をつけたまま醸造する赤ワインには、赤ワインポリフェノール(※1)という色素成分が含まれている。この成分に強力な抗酸化作用が期待できることは、もう周知の事実だ。

■石川さんコメント
「赤ワインポリフェノールにはその他にも、血行促進効果、血中コレステロールの低下、下痢や便秘の改善などの効能も期待できます。サッカー選手にとって大切な眼の機能をサポートするポリフェノール、アントシアニンが含まれていることも見逃せないメリットですね」

守備範囲の広いサイドバックというポジションで、90分間のゲームにフル出場したとする。瞬発系と持久系の動きをこの間延々と繰り返す。すると当然、体内に大量の酸素を取り込むこととなる。
そのうちの一部は反応性の高い活性酸素(※2)に変化し、手近な細胞を次々に酸化させてしまう。この酸化反応こそカラダが「錆びる」と表現される現象で、老化やさまざまな病気の引き金になるといわれている。
僕のように運動量が多いアスリートは、こうした活性酸素の害に曝されやすいというわけだ。ならば赤ワインを飲むことで活性酸素の消去効果が期待できるポリフェノールが摂れるなら、好都合。僕がアマローネを好んで飲むようになったもうひとつの理由がそれだ。

さて、食事革命を始めた当初、僕は一時期アルコールを一切口にしなかった。自分自身のカラダを実験台にして、どんな食物や栄養がパフォーマンスアップに繫がるかを模索したかったからだ。
砂糖を抜き、濃い味付けを避け、食事内容をガラリと変えてしばらくした頃だ。ある日、久々にアマローネを口にした。するとどうだろう。ワインが舌に触れた瞬間、すごく強い刺激を感じた。そのあまりの味の濃さにびっくりしてしまった。味覚が鋭くなっただけではない。カラダの中をワインが流れていくのがはっきりと分かる。それほど、カラダ全体が食べるもの飲むものに関して敏感になったことを自覚した。これは赤ワインを飲まなければ分からなかったひとつの発見だった。

今また僕は、体調と翌日のスケジュールと相談しながら1日1杯の赤ワインを楽しんでいる。食事とともに大好きなアマローネを飲む時間は、楽しくもありホッとできるひとときだ。精神面でのリラックス効果(※3)にも大いに繫がっていると思う。
活性酸素のリスクに曝される条件は、なにも激しい運動ばかりではない。ストレスや喫煙、大気汚染などによっても同様にリスクは高まる。1杯の赤ワインは多忙なビジネスパーソンにとっても、健康を後押ししてくれる味方となるに違いない。
イタリアで僕がよく飲んでいる銘柄は、《TOMMASI》か《MASI》だ。もし、どこかでお試しの機会があれば、ぜひ、味わってみてほしい。


※1 赤ワインポリフェノール
赤ワインにはフラボノイド、アントシアニン、カテキン、タンニンなど多種のポリフェノールが含まれる。

※2 活性酸素
運動やストレスなどの諸条件で増えすぎた活性酸素は老化やがん、生活習慣病を引き起こす原因になる。

※3 リラックス効果
一説によるとワインの香りはリラックス状態で増加する脳波、α波を促す効果があるともいわれる。


●ながとも・ゆうと 小学校1年でサッカーを始め、東福岡高校、明治大学を経てFC東京でプロデビュー。2010年イタリアに渡り、現在インテル・ミラノに所属。


Tarzan No.713 内臓脂肪 皮下脂肪 掲載 〉
構成/石飛カノ 撮影/中島慶子 監修/石川三知(Office LAC-U)