Feb25Sat

油と食材選びでケガに対処。

2017.02.07

長いシーズンを戦うアスリートがときにケガに見舞われることは珍しくない。プロを名乗る以上、ケガを未然に防ぐことも仕事のひとつだが、予想外のアクシデントを防げないケースもある。

2015年、さまざまなケガに悩まされて以降、食生活を変え、オリジナルのヨガなどでコンディショニングに努めてきた僕だが、昨年の秋、突如ふくらはぎに違和感を覚えた。大事にこそ至らなかったが、2016年の9月に行われたワールドカップアジア最終予選のUAE戦、タイ戦には残念ながら不参加となってしまったのだ。

蓋を開けてみると、原因は筋膜炎(※1)だった。
筋肉や骨、内臓、血管などカラダの組織はすべて一枚の薄い膜によって覆われている。これが三次元空間でカラダを正しい位置に保つ、「第二の骨格」とも呼ばれる筋膜。筋膜炎は文字通り、その筋膜が疲労や何らかの衝撃によって炎症を起こしてしまった状態のことだ。炎症がひどくなれば肉離れに陥ることもある。

僕のような軽度の症状の場合、一番の治療法は休養やマッサージなどだが、他にもできることはある。食事でケガの改善を下支えすることもまた可能なのだ。今回はケガをした際の食事について語っていくことにしよう。
筋膜炎で最終予選の序盤戦から離脱したのは、今、僕の専属シェフを務めてくれている加藤超也シェフがイタリアに来たばかりの時期。加藤シェフがまずやってくれたことは、食材や油脂の質を選ぶことによる血管のケアだった。

■加藤シェフコメント
「炎症物質を除去し、栄養を含んだ新鮮な血液をケガの患部に送り届けるために、血管のケアは必須です。DHAやEPAといった血液循環を促すオメガ3系の脂肪酸を含む青魚やマグロといった魚のメニューを増やしました。さらにプラスαとして、やはりオメガ3系のα-リノレン酸が豊富なアマニ油も積極的に取り入れました。もともとオメガ3系の油脂を摂っていたことは聞いていましたが、ケガの改善という意味でさらに食材+油脂のダブル作用を狙ったのです」

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サッカー選手にとってケガからの復帰は重要な課題だ。

肉を食べるときはグラスフェッドビーフを。

とはいえ、魚ばかり食べていたわけではない。肉もしっかり口にしていた。ただし、ただの肉ではなく、飼料にまでこだわった牛の熟成肉だ。薄切りにしたその肉をシンプルに焼いて、やはりアマニ油をかけて食べる。これが実に味わい深い。

■加藤シェフコメント
「トウモロコシなどの穀類のエサで育った牛の肉をグレインフェッドビーフといいます。これに対して、牧草を食べて育った牛の肉をグラスフェッドビーフといいます。前者はもともと、肉質を柔らかくしたり脂肪を増やしたりする、いわゆる「おいしさ」を追求した飼育法。ところが、グレインフェッドビーフはオメガ6が必要以上に含まれています。オメガ3とオメガ6の摂取量のバランスが崩れると、血流が阻害されるリスクも高まります。そこで、肉質そのものを見直すことにしたのです」

牧草で育ったグラスフェッドビーフにはほとんど脂肪が含まれていない。正真正銘の赤身肉だ。シンプルにそのままステーキもよいが、肉質の硬い肉は熟成させることで肉質も柔らかくなり食べやすくなる。
というわけで、加藤シェフが辿り着いた答えが熟成肉(※2)だ。日本でもここ数年、熟成肉がブームになっていると聞くが、ミラノにもそうした肉を扱う専門店がある。やや値段は張るが、そこで仕入れた熟成肉を食べる機会が最近では多くなった。
後で聞いたところによると、管理栄養士の石川三知さんからもこんなコメントがあったという。

■石川さんコメント
「人のカラダが食べるものでできているのと同じように、他の動物も食べ物によってできています。牛は本来、草を食べる動物です。もともと食べていないものを食べさせて大きくしたのか、本来食べるべきものを食べて大きくなったのかでは、中身がまったく違います。自然のものを食べている人とラーメンや菓子パンなど加工品を食べている人の血液検査の数値が違うのと同じこと。
消化吸収のいい熟成肉であることも、カラダに余計な負担をかけないというメリットになります。アマニ油などのオイルをかけるのもいいですが、他にタンパク質の消化酵素、プロテアーゼ(※3)が豊富な野菜(玉ネギ・ショウガ・ニンニク・セロリ・大根)や果物(パイナップル・キウイ・パパイヤ・マンゴー)を下ごしらえに使用したりヨーグルトや塩麴などに漬けたりすると、さらに消化吸収の負担が減るのでおすすめです」

食材を選び、油脂の質を変えることを徹底したせいだろうか。最初は血液が圧迫されているような感覚があったのだが、徐々にそれも改善されていった。
ケガを完全に克服した僕は、2016年11月にアジア最終予選のサウジアラビア戦に出場。ゴールに繫がるパスワークに関わることもでき、チームの勝利に貢献できた自負がある。その裏にはこの食事法があると思っている。


※1 筋膜炎
アスリートやスポーツ愛好者によく生じるケガ。足の裏、太腿、ふくらはぎなど部位はさまざま。

※2 熟成肉
温度や湿度などを一定に調整するドライエイジングが一般的。線維が分解され、柔らかさや旨味が増す。

※3 プロテアーゼ
野菜や果物、きのこ、豆類などに含まれる食物酵素で、タンパク質を吸収しやすい状態に分解する。


●ながとも・ゆうと 小学校1年でサッカーを始め、東福岡高校、明治大学を経てFC東京でプロデビュー。2010年イタリアに渡り、現在インテル・ミラノに所属。


Tarzan No.711 首&肩甲骨&骨盤 掲載 〉
構成/石飛カノ 撮影/中島慶子 監修/石川三知(Office LAC-U)