Feb25Sat

間食の工夫で摂りにくい栄養素を。

2016.12.30

イタリアは八百屋、精肉店、鮮魚店が多く、特に専門店で買い物をする際は売り手と買い手がコミュニケーションをとりながら行うという商店街方式が基本のスタイルとなっている。
日本では野菜の買い物をする際も客が商品を選んで買うスタイルが基本となっているが、イタリアは欲しい商品を伝えて、売り手が商品を選ぶというスタイルなのだ。

今、僕の食事を作ってくれている加藤超也シェフも、最初はこのスタイルに戸惑ったという。なぜなら今までは、自らの目利きで新鮮な食材を選ぶというスタイルが習慣だったためだ。
そんな戸惑いもつかの間の悩みで終わった。毎日早朝に新鮮食材を求めて買い付けに通っていると、ある日を境に店員が「どれがいいんだ?」と聞いてくれるようになり、自分が欲しい食材を買えるようになった。
今では自然にコミュニケーションができ、時にフルーツを味見させてくれたり、良い食材を優先的にお勧めしてくれるようになって、いつの間にかミラノの空気感に馴染んでいったという。

ミラノでは最近、さまざまな商品が取り揃えられたオーガニックスーパーマーケットが増えてきている。気軽に商品を物色できることからその人気はなかなかのものだ。
僕が半年くらい前から通うようになったオーガニックスーパーも、そんな店のひとつ。〈チェントロ・ボタニコ〉という店で、ドゥオモやガッレリアなどがあるミラノの中心街からもほど近い場所にある。
ここは有機農法や低農薬商品を扱うスーパーマーケットで、ビオ食材(※1)、ビオワイン、多分マクロビ食品として利用されるのであろう豆腐や海藻なども扱っている。店内には薬草医が常駐する薬局コーナーやオーガニックカフェもあり、健康に対する意識の高い人々でいつも賑わっている。

僕は毎朝摂っているスムージーに加える食材のいくつかを、この店で入手している。たとえば、チアシードやアサイー。日本でもすっかり知られるようになったチアシードは、各種ビタミン、ミネラル、食物繊維、必須アミノ酸、オメガ3脂肪酸などを豊富に含む、いわゆるスーパーフード。アサイーは抗酸化成分や鉄分、カルシウムが豊富な、こちらもやはりスーパーフードだ。
そのほか、アーモンド(※2)やピスタチオ、クルミといったナッツ類、亜麻仁油、グリーンティー、カモミール系のハーブティー、ときにはオーガニックの野菜や安全な飼料で育てられた鶏肉などの生鮮食品を買い求めることもある。

子どもの頃から今に至るまで、僕は常に食事を提供する側ではなく、提供される側にいた。それゆえ、食材を吟味して買い物をするなどということはこれまでなかったことだ。
そんな僕が、ミラノにいるときはオーガニックスーパーに足繁く通い、カラダにいいという食材をたくさん買うことになるとは。こういう話をすると周囲の人間は大抵驚くが、一番びっくりしているのは僕自身だ。

オーガニックスーパーでナッツ、ダークチョコを手に入れる。(撮影/長友佑都)

オーガニックスーパーでナッツ、ダークチョコを手に入れる。(撮影/長友佑都)

空腹時の間食で栄養素を補給する。

さて、〈チェントロ・ボタニコ〉に足を向けたときには、必ずといっていいほど買うものがある。それはダークチョコレート。カカオ成分が70%以上のもので、ビターチョコレートと呼ばれることもある。
僕が買っているダークチョコは、カカオ成分99%(※3)。ここまでいくと、チョコレートの甘さなどというのはまったく期待できない。ただただ、苦い。ちょっと前までの僕は、そんなものを口にする人を見るたびに、
「意味が分からない」
と思っていた。
「チョコレートは甘いからこそ美味しいのに、わざわざ苦いチョコを食べて何が楽しいんだ?」

その僕が今やダークチョコを大人買いしている。主に間食用としてだ。シーズン中、アウェーの試合があるときは飛行機やチームバスなどで移動することが多い。その移動スケジュールは食事のタイミングとはまるで無関係に組まれることが珍しくない。このとき、しばしば悩まされるのが空腹をどう凌ぐか、ということ。
甘いもの好きの僕は以前、クッキーやデニッシュなどを間食として口にしていた。今考えると、これは論外。何より白い砂糖がどっさり入っていることが理由のひとつ。さらに、クッキーやデニッシュは「食事」ではなく「菓子」で、糖質以外の栄養素の補給がまったくできないというのが、もうひとつの理由だ。

移動中に食事ができないときの今の僕の間食は、アーモンドなどのナッツ類、もしくはダークチョコレート、生のカカオ豆だ。
これには空腹をやりすごすこと以外に、アーモンドの外皮やカカオに含まれるポリフェノール、そしてどちらにも含まれている鉄分を補給するという目的がある。酸化を防ぐポリフェノールも赤血球中のヘモグロビンの材料になる鉄分も、どちらもアスリートにとっては不可欠の栄養素だ。カカオ豆はとても苦いので、レーズンなどと一緒に口に含んで食べると美味しく食べられる。
「間食」=「おやつ」ではない。空腹なときこそ、普段摂りにくい栄養素を摂るチャンス。多忙なビジネスマンの方にも通じるセオリーだろう。


※1 ビオ食材
有機加工食品、有機農産物などのオーガニック製品のことをヨーロッパではビオと称している。

※2 アーモンド
ポリフェノールや鉄のほか、オレイン酸、ビタミンE、食物繊維なども豊富。間食には12粒程度が適量。

※3 カカオ成分99%
通常のチョコレートのカカオ成分は30〜50%。99%となるとカカオポリフェノールが効率的に摂れる。


●ながとも・ゆうと 小学校1年でサッカーを始め、東福岡高校、明治大学を経てFC東京でプロデビュー。2010年イタリアに渡り、現在インテル・ミラノに所属。


Tarzan No. 709 「食べる」トレーニング 掲載 〉
構成/石飛カノ 撮影/中島慶子 監修/石川三知(Office LAC-U)