Jan19Thu

セミケトン食にシフトする。

2016.12.13

前回に引き続き、糖質コントロールの話をしようと思う。
実験的にストイックな糖質制限に取り組んでいるうちに、練習後、エネルギー不足を感じることがしばしばあった。もともと糖質制限食は糖質代謝の機能が低下した糖尿病の人やその予備群の人たちのために考案された食事メソッドだ。糖質の代わりに脂肪酸由来のケトン体を利用することで、確実なダイエット効果も認められている。
でも、代謝機能に問題がなく、余分な体脂肪もない僕のようなアスリートが、厳密な糖質制限食を実践するメリットはあるのだろうか?
そう思っていた矢先に、連絡をとってきたのが加藤超也シェフだった。
オフ期間の日本帰国時に彼と会い、さまざまな話をした。イタリア料理の料理人として10年のキャリアを持つ加藤シェフはアスリートフードマイスター(※1)とケトジェニックダイエットアドバイザー(※2)という資格の持ち主でもあった。
食事の重要性を自覚し、食事への意識が高まっているこのタイミングでの彼との出会いは、まさに運命的と言ってもいいだろう。迷う必要はどこにもなかった。僕は加藤シェフに専属シェフとしてイタリアに来てもらうことにしたのだ。

■加藤シェフコメント
「当時、本人はとくに食事法を変えたことを公表していませんでしたが、SNSにアップしていた食事の写真を見た瞬間、糖質制限食だということに気づきました。糖質はエネルギーとしての枯渇が早いのに比べ、ケトン体のエネルギー回路は確かに長時間運動には有利です。ただしケトン体エネルギー回路にすることは、単純に糖質の摂取を制限すればよいということではなく、さまざまな栄養バランスが必要となります。特に本人はアスリートですから、コミュニケーションをとりながら必要な量の糖質(炭水化物)の摂取をアドバイスさせていただきました」

ミラノのキッチンで談笑する加藤超也シェフ(左)と筆者。運命的な出会いにより、さらに食事革命は進化する。(撮影/長友麻步)

ミラノのキッチンで談笑する加藤超也シェフ(左)と筆者。運命的な出会いにより、さらに食事革命は進化する。(撮影/長友麻步)

僕の場合、内臓脂肪(※3)や体脂肪が少ないので、エネルギーの材料がなくなれば筋肉が分解されてしまう。筋肉量の低下は、即パフォーマンスの低下につながる。これはアスリートとしては致命的だ。加藤シェフからのアドバイスを受けて、カラダに必要な糖質の摂取を必要エネルギー量と相談しながら摂取するようにシフトチェンジした。
もし本格的にスポーツに取り組んでいる読者の方がいたら、スポーツ競技種目やトレーニング内容により必要なエネルギーに違いがあることを認識したうえで取り組むことが重要。自身の競技の特性に合うか、食事法として自身のカラダの感覚に合うかを知るためにも、ケトン体について知識のある方や専門家にアドバイスしていただきながら実践することをお勧めしたい。こうしたアドバイスも実際にその食事法が自分に合うかどうか試してみた感覚と知識から得られたものだ。今後も自分自身のカラダと相談し、シェフとコミュニケーションをとりながら、最高の食事法を見つけていきたいと思う。

適度に炭水化物を摂取し、血糖値をコントロール。

さて、今の僕の食事内容をざっとご紹介しよう。
朝はこれまでと変わらず、果物や野菜、スーパーフードで作るスムージー。昼は炭水化物を主に米で摂ることにした。量的にはごはん茶碗1杯程度。夜は、たっぷりの野菜とタンパク質の主菜中心の食事。炭水化物の摂取は極力控える。
昼の炭水化物以外は変わっていないように感じるかもしれないが、食事の中身を見るとこれまでとは異なる工夫が凝らされているのだ。加藤シェフの狙いは、食事前後の血糖値を安定させるというものだった。

■加藤シェフコメント
「糖質中心の食事のデメリットのひとつは、食事のたびに血糖値が乱高下するということです。短時間のうちに過剰な糖質を摂ると、血糖値は一気に跳ね上がります。すると血糖値を下げようとして膵臓からインスリンが大量に分泌されて、今度は血糖値が下がりすぎてしまいます。
こうした血糖値の乱高下を繰り返すことはカラダにとって非常に負担になるうえ、グルコースを枯渇しやすい体質になってしまいます」

糖質はなにも主食の炭水化物だけに含まれているわけではない。芋やカボチャといった食材にも含まれている。加藤シェフは糖質の多い食材を極力控え、糖質過多にならないような食材を選んでくれているのだ。

■加藤シェフコメント
「野菜の中ではとくに、アスパラガス、ブロッコリー、カリフラワーなどを積極的に取り入れるようにしています。これらは抗酸化ビタミンのビタミンC含有量が多い野菜。長友さんはたくさんの量を食べるタイプではありません。なので、少量で効率よく栄養素を補給する手段として、栄養価が高い食材を選ぶことを心がけています」

今の僕の食事スタイルは、「セミケトン食」だ。エネルギー不足の感覚もなくなり、糖質もケトン体もバランスよく使えている。こうして一通のメールがきっかけで、僕の食事革命に新たな局面が開けたのだ。


※1 アスリートフードマイスター
スポーツの食事学を学び、競技別や年齢別に食事を設計するスキルを身につけた人が得られる資格。

※2 ケトジェニックダイエットアドバイザー
糖質制限によりケトン体回路を使って健康になるケトジェニックダイエットを指導できる資格。

※3 内臓脂肪
腸管膜などに蓄積される脂肪。運動する際、体脂肪の中では内臓脂肪がまず動員されてエネルギーになる。


●ながとも・ゆうと 小学校1年でサッカーを始め、東福岡高校、明治大学を経てFC東京でプロデビュー。2010年イタリアに渡り、現在インテル・ミラノに所属。


Tarzan No. 708 呼吸と姿勢 掲載 〉
構成/石飛カノ 撮影/中島慶子 監修/石川三知(Office LAC-U)